西梅田ワーカーのちょい飲み狙う“立ち食いの聖地”
百貨店のデパ地下で、ここまで庶民的な飲食ゾーンがほかにあるだろうか。改装前から昼どきはいつも混雑していたスタンド式フードコート「スナックパーク」は1957年の開店時から営業。「早くて安くてうまい」をコンセプトに、せっかちで味にうるさく、値段に厳しい大阪人の舌に応え、いまや「大阪の文化」とまで評されている。建て替え工事に伴い、2015年にやむなく閉店。看板商品の「いか焼き」はテイクアウトでの展開を継続し、1日8000枚を販売してきた。
改装にあたっては、立ち食いスタイルと値段を見直す意見もあったが、従来からの基本コンセプトは変えず、新規で百貨店初出店の8店舗を導入。酒の提供も始め、夜のちょい飲みのニーズに応えたという。平日は15時~、土日は開店時間から。半分の店舗でビールやワインなどのアルコールを提供している。閉店時間も22時まで延長し、席数は70席から130席に増えた。
「ワンコインでスピードランチ、夜はせんベロ(千円でベロベロ)酒場が、新しいスナックパークのテーマ。出店店舗には女性が食べやすい手ごろな容量で500円か600円の料理を作ってもらった。料理ができるとブザーが鳴るフードコートではなく、その場で待っていれば2~3分で出てくる。滞在してのんびりというよりは、さっと食べられて安くておいしい。この三拍子がそろった京阪神の名店を集めた」と、スナックパークを開発した阪急阪神百貨店フード営業統括部生鮮・惣菜商品部長の中尾康宏氏は話す。
新たに仲間入りしたのは中華そばの「カドヤ食堂」、タレ焼肉丼の「牛焼き みらく」、天丼の「天ぷらの山」、海鮮居酒屋の「立ち食い魚 ふじ屋」、うどんの「とり天うどん てんぼう」、にぎり寿司の「寿司 魚がし日本一」、焼きスパゲッティとワインの「ROMA-KEN」、お好み焼き・焼きそばの「道頓堀 赤鬼」の8店舗。旧スナックパーク時代からの人気店のうち、「阪神名物 いか焼き」「うまかラーメン」「元祖ちょぼ焼き本舗」「たまご丸」「御座候」の5店舗が復活した。
大阪・西長堀の中華そばの有名店として知られるカドヤ食堂はスナックパーク用に毎日でも食べられる生麺を開発。「何度もすすってもらえて喉ごしが滑らかで、スープに絡みやすい長めの細麺にした。本店の味をベースにしているが、全く別物。スープもサッと飲める味付けにしている」と、店主の橘和良氏は話す。大阪市内から来た男性客は「本店でも食べたことがあるが、やっぱり関西一のおいしさ」と絶賛。量が少なめなので、他の店もはしごしたいと話していた。
天ぷらの山は揚げたて天ぷらを定食で提供する大阪・箕面の人気店。店主の榊潤二氏は「天ぷらと天丼は別物だから、これまでは期間限定でしかやってこなかった。今回は立ち食いの天丼を一から開発した」と話す。500円の「海老天丼」には大きなエビの天ぷらが2本。夜は焼酎も用意しているので、がっつり食べたいときの晩ご飯にもおすすめ。
「夜飲みを狙いたい」と、ワインとワインに合う料理を充実させたのがROMA-KENだ。低価格のスパゲッティが評判の同店は近くの大阪駅前第3ビルにも出店しているが、阪神では「西梅田の女性ワーカーを意識し、バル感覚のメニューを用意した」(同店担当者)。ワイン3種類の飲み比べが楽しめ、自慢のパスタも400円で提供する。
市場直送の魚を安く味わえると人気の海鮮居酒屋「ふじ屋」も出店。初のスタンド業態では「30分で魚をチャージしよう」をキャッチコピーに、時間がなくてもおいしい魚を気軽に食べられる店にしたという。
新生スナックパークは大阪市内に相次ぎオープンしたフードホールとはひと味違う面白さがある。「梅田に来たら必ず阪神に来ていか焼きを2枚食べる」というファンはもちろん、これまで足を運んだことがなかった女性客からも人気を集めることだろう。
初出時に「肉焼き みらく」としてしましたが、正しくは「牛焼き みらく」でした。お詫びして訂正いたします。該当箇所は修正済みです。 [2018/6/29 9:40]
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