あえて“時短”は求めない?

 20分で2品作れるというKit Oisixだが、ほかの料理キットとの大きな違いは、ネギやオクラ、キュウリなど、カットされていない野菜も同梱されていること。その理由について、オイシックスは「鮮度の問題」と説明する。

 「野菜はカットすると鮮度が落ちる。鮮度を落とさないためには保存用の薬剤を使わなければならないが、農薬や合成肥料に頼らないなどの安全基準を掲げているオイシックスとして薬剤は使いたくなかった」(奥谷室長)。そんななか、鮮度を保ったまま保存できる袋を研究し、選定するなどして、2015年夏に販売を開始した。

かぼちゃの角切りや薄切り、千切り大根などをそろえる。野菜の種類ごとにそれぞれの呼吸量に適した袋を使い、産地から顧客宅まで一貫して低温・冷蔵の状態を保ったまま流通させることで、カット後も鮮度を保てるようになったという
かぼちゃの角切りや薄切り、千切り大根などをそろえる。野菜の種類ごとにそれぞれの呼吸量に適した袋を使い、産地から顧客宅まで一貫して低温・冷蔵の状態を保ったまま流通させることで、カット後も鮮度を保てるようになったという
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 今後も、鮮度が落ちやすい野菜はカットしない方針だという。「野菜を切る手間はかかるかもしれないが、料理のプロセスとして楽しんでもらいたい。キットの調理時間である20分が本当に短いかどうか考え始めると、スーパーで総菜を買ったほうが時短になるという結論に達してしまう。10分でも20分でもいいので台所に立って家族のために料理したいという人を応援したい」と奥谷室長は話す。

(文/樋口可奈子)

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