勝ち残ったのは無名の超新星と実力者

 『ウイイレ』は、シリーズ1作目が発売された1995年からの長い歴史を持つ、コナミデジタルエンタテインメントの看板タイトルの1つで、世界的に人気のサッカーゲームだ。海外では『PRO EVOLUTION SOCCER』と呼ばれ、その頭文字をとったPESリーグというUEFA Champions League公式のeスポーツ世界選手権も開催されている。日本でも、大会で優れた成績を出した選手に対して、JeSU(一般社団法人日本eスポーツ連合)がプロ認定を行っている。

 代表選考会には、オンライン予選およびオフライン予選を勝ち抜いた10人と、JeSUのプロライセンス保有選手10人が参加。1グループ5人による総当たりのリーグ戦を勝ち抜いた4人が、LFS(ルフス)池袋 esports Arenaでの最終決戦に出場し、ここで1対1の試合をして、それぞれの勝者2人が日本代表に選考されるというレギュレ―ションで行われた。

 熾烈(しれつ)な予選会を勝ち抜き、5月27日の最終決戦で、まず日本代表の座を射止めたのは、誰もがノーマークだったレバ選手。17歳の高校生である。対戦相手のかつぴーや選手が繰り出したのは、現実のサッカーではお目にかかれない「5-2-3」という超変則フォーメーションだったが、eスポーツのプロたちを唸らせる冷静さでそれに対応。次々に得点を積み重ねた。年齢が若く、これまで大きな大会に出たことのない超新星が、日の丸が付いたユニフォームを着て、他国の強豪と挑戦する権利をもぎとったのだ。

 もうひとつの代表の座を射止めたのは、今大会の大本命の一人でもあったSOFIA選手だ。JeSUのプロライセンスを保有する21歳の実力者で、欧州の大会での優勝経験もある日本最強の競技者の一人だ。対戦相手のあると選手に「想定していた複数のパスコースが、事前にすべて潰されていた。どうすれば勝てるんだ……」と試合後に嘆かせるほどの横綱相撲で、一発勝負を危なげなく勝ち切った。

現実のサッカーではありえない変則フォーメーションが見られるのもeスポーツならでは。これはレバ選手とかつぴーや選手の試合におけるワンシーンだ
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試合中の会場の様子。スクリーンには、あると選手とSOFIA選手の試合風景が映し出されている。なお、決勝に進出した4選手ともに使用チームはアーセナル(イングランド)だった
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 在野の若きゲームプレーヤーと最前線で戦い続けてきた競技者の2人が日本代表に選ばれたことは、これから社会的地位を固めることを目指すeスポーツにとって、望みうる最高の形だったことは、ぜひとも強調しておきたい。

 それというのも、レバ選手は実力さえあれば誰でも日本代表になり、国際スポーツ大会に挑めるというeスポーツ・ドリームを体現したからだ。自宅でテレビゲームに夢中になっている無名のプレーヤーたちにも、腕さえ磨けば日本代表になれるという目標を与える存在になってみせた。一方、SOFIA選手は、eスポーツの最前線で戦ってきた競技者としてのプライドを背負い、これまで日陰の扱いをされることもありながらeスポーツ・カルチャーを盛り上げてようと努力してきた競技者たちの努力を結実させるかのように、日の丸のついたユニフォームに袖を通した。

 テレビゲームが一般に普及してから、およそ40年。ゲーム産業は今、ゲームをスポーツとして認めさせるという新たな課題に挑戦する時代へと突入している。その第一歩として、今回の大会は、大きな成功を収めたと結論付けることができるだろう。

日本代表として取材を受けるレバ選手(左)とSOFIA選手。ともにサッカーゲームを機にサッカーそのものを好きになったという経歴を持ち、ゲームがスポーツ人口の底上げにつながることを証明するeスポーツ競技者でもある。
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