出先で突然雨が降ってきたら、ビニール傘を求めてコンビニに駆け込む人が多いだろう。しかし、そんなときにはコンビニの布傘に目を向けてみてほしい。かなり進化していて高機能なうえ、コストパフォーマンスが非常に高いのだ。
ビニールの代わりにペラペラの布(布といってもナイロンやポリエステル)を張った安っぽいものではなく、最新のコンビニの布傘は高機能でデザイン性も高い。骨や生地の素材にこだわり、スタイリッシュなデザインでハンドルも持ちやすい形状になっている。
そして何より特徴なのが、折れにくいこと。その理由は、強風にあおられるとひっくり返る構造にある。骨自体は丈夫だが非常にしなやかで、骨が上を向く“おちょこ”状態になって風を受け流す。突風に抗うのではなく、カタチを変えて風を逃がして破損を防ぐのだ。
興味深いことに、コンビニ大手3社の最新布傘は、すべて“ひっくり返る”構造を採用している。コスト面や軽さ、使いやすさを考慮すると、おそらくこの構造がもっとも折れにくいのではないだろうか。価格は各コンビニで異なるが、だいたい1400~1900円前後と極端に高いわけではない。むしろ性能を考えると割安感さえある。
高機能で長く使え、コスパも良い。そんな各コンビニの最新の布傘を見ていこう。
帝人製の撥水生地を使用【ローソン】
ローソンの布傘は折れにくいだけでなく、生地にも力を入れている。帝人が開発したナノテクノロジー撥水生地「スコーレ」を採用。水滴がコロコロと生地の上を転がる高い撥水性を持ち、その効果が長時間キープできるという。
「ゲリラ豪雨にも対応できる高機能な傘の品ぞろえ要望をちょうだいし、専門店などの市場でも販売が伸長していることを受け、開発・発売した」(ローソン広報室の村上京子氏)。
「専門店などでは4000円以上で販売しているスペック」(村上氏)という高機能傘を、税込み1944円で買える。スケールメリットを活かした価格設定も、全国展開のコンビニならではの大きな魅力だ。
ローソンの「ハイブリッド傘」。強風で傘がひっくり返っても元に戻る耐風構造。税込み1944円
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ハイブリッド傘は長さ65cmのジャンプタイプの長傘。広げたときの大きさは約110cm。石突き(傘の先端)にクッション性があるタフ素材を使用しているのも見逃せない
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傘を開くボタンがフラット形状でシルバーだったり、中棒(手で持つセンターシャフト)がカーボン柄だったりとデザインもスタイリッシュ
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マットな質感でファッション性が高い【セブン-イレブン】
セブン-イレブンの布傘は、著名クリエイティブディレクター佐藤可士和氏プロデュースによるブランド「セブンライフスタイル」から発売。“日常をより上質に”をコンセプトに、デザイン、素材、ディテールにこだわった生活雑貨を展開する同ブランド。布傘も生地も骨もマットな仕上がりでおしゃれ感があり、ファッション性が高い点が特徴といえる。
「今までは雨が降ったら間に合わせでご購入いただいていましたが、しっかりしたもの、使えるものといったデザイン性・機能性ともに価値のある傘のニーズが高くなっている」(セブン&アイ・ホールディングス広報センターの関口遥氏)。
セブン-イレブンの「セブンライフスタイル 風に強いワンタッチ長傘 70cm」。親骨がグラスファイバー製で、風で反り返っても元に戻る構造になっている。税込み1458円
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長さ70cmのジャンプタイプの長傘で、広げたときの大きさは約110cm。持ち運びに便利な傘袋が付く
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すべての部材をマットブラックで統一したシンプルなデザインに注目。ハンドルが太く持ちやすい
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折りたたみ傘もおしゃれ【セブン-イレブン】
佐藤可士和氏プロデュースのセブンライフスタイルは、折りたたみ傘もラインアップしている。長傘と同様にこちらもデザイン性が高く、コンビニの折りたたみ傘とは思えないしゃれ感がある。
セブン-イレブンの「セブンライフスタイル 自動開閉折りたたみ傘」。オレンジとブラックの2色展開。税込み1018円
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親骨の長さは54㎝とコンパクトな作りで、男女問わず使えるのも魅力だ
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ファッション性だけでなく機能性も上々。持ち手のボタンで自動開閉ができるので、駅への出入りでもたつくことがない。265gとカバンに入れてもさほど気にならない程度の重さなのもポイント。「雨が降っていないときに買われる方が多いのも特徴」(セブン&アイ・ホールディングスの関口氏)という。
便利な自動開閉機能が付いてこの価格はお手ごろ
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傘袋が大きく開くため入れやすい。生地も厚いので、傘に付いた水が染み出ることもない
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ひっくり返ってもスムーズに戻せる【ファミリーマート】
“おちょこ”になった状態から、元に戻す際の負荷を抑えているファミリーマート。親骨と受け骨(傘を開いたときに親骨を支える骨)の間にある、両者をジョイントする“ダボ”と呼ばれる接続部に仕掛けがある。通常のダボの形状とは異なり、親骨と受け骨をZ型にジョイントすることで傘にかかる負荷を軽減するとともに、軽い力でスムーズに傘を元に戻すことができるのだ。
「近年、急な雨で購入する場合も長く使える傘を買いたいという方が増えており、布傘の売り上げは伸長傾向にある」(ファミリーマート広報室の高岡夏氏)という。
ファミリーマートの「耐風ジャンプ傘70cmネイビー」。グラスファイバー骨を使用した、ひっくり返っても壊れにくい耐風仕様の布長傘。税込み1458円
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ジャンプタイプで長さ70cm。広げたときの大きさは約117cmの大判モデル。男性向けのネイビーを展開
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Z型ダボを採用しているため、ひっくり返っても傘への負担が少なく、スムーズに元の状態に戻すことができる
折りたたみ傘もひっくり返る! 【ファミリーマート】
いまの季節は、出勤時に雨が降っていなくても常に傘を携帯しておく必要がある。となると、長傘より折りたたみ傘のほうが使い勝手が良い。コンビニは折りたたみ傘も進化しているのだ。
ファミリーマートの「耐風テフロン折傘65cm」。撥水性に優れたテフロン加工生地を採用している。税込み1382円
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親骨の長さは65㎝で、一般的な長傘と同じ大判サイズという点にも注目
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ファミリーマートは今季、長傘と同様にひっくり返る構造の折りたたみ傘を発売した。前項で紹介した「Z型ダボ」は採用していないものの、折りたたみ傘で“おちょこ”になる耐風仕様は珍しい。長傘と比べると折りたたみ傘は強度が弱いイメージがあるが、これなら風雨にも耐えられそうだ。
「ゲリラ豪雨や台風の際に、少しでも丈夫な傘、サイズの大きい傘が欲しいという声にお応えして、耐風仕様や大判サイズの傘を強化した」(ファミリーマートの高岡氏)。
一般的なビニール傘と同じ65cmサイズで、折りたたみ傘にしては十分大きい。また、生地にテフロン加工を施しているのでしっかり雨を弾く。持ち運びできて風雨に強い“使える”1本だ。ちなみにファミリーマートでは、ひっくり返る構造のビニール傘も展開している。
専門店では500円の折りたたみ傘もあるので、1000~1500円を高いと感じる人もいるかもしれない。しかしコンビニという身近な場所で購入できて、500円傘とは比べものにならないほど高クオリティー。コンビニの折りたたみ傘は2~3倍の値段を払ってでも、買う価値が十分あるのではないだろうか。
(文/津田昌宏)
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