死んだゴキブリを見届けたいvs見たくない
フマキラーによると、従来の家庭用のゴキブリ駆除剤は、大きく4つのタイプがあった。煙状の薬剤を散布してゴキブリに付着させて駆除する「くん煙・くん蒸剤」、ゴキブリが出現した際にスプレーを直接噴きかけて退治する「エアゾール殺虫剤」、誘引剤の入った捕獲器に粘着のりが付いた「トラップ型捕獲器」、そしてゴキブリが好む餌に殺虫成分を混ぜた「ベイト剤(毒餌剤)」だ。
これらはそれぞれ良い点と不満点がある。エアゾールタイプの殺虫剤やトラップ型の捕獲器は、ゴキブリに遭遇しないと駆除できない。ベイト剤は本当に食べているのか、効いているのか見ることができず、効果が実感しにくい。くん煙・くん蒸剤は観賞魚やペット、住人を守るための準備が面倒。これらの不満点をすべて解消したのがゴキブリワンプッシュなのだという。
使い方は、ゴキブリが隠れていそうなところにワンプッシュするだけ。奥まで薬剤が届き、隠れているゴキブリまで逃がさず駆除できる。ユニークなのはゴキブリが隠れた場所で死ぬことを防ぐため、あえて薬剤量を調整していること。同商品はゴキブリの神経を興奮させる薬剤なので、薬剤を浴びたゴキブリは興奮して、潜伏場所から飛び出してくる。これを「フラッシングアウト」というが、この追い出し効果により外で死ぬので、効果がはっきりと実感できるわけだ。それでいて薬剤は家具などの隙間にしかかからないので、床の汚れを気にせずに済む。待ちぶせ効果は約2週間続くため、ゴキブリの卵がふ化する2週間おきを目安に使うと、ゴキブリのいない環境を作り出すことができるという。
こうした点から、「見えないけど、あの家具の裏あたりに絶対いる!」と気配を感じながらも対策を行っていなかった新規ユーザーを取り込めたことも、ヒットした要因の一つだという。「この“駆除効果の見える化”というコンセプトを販売店や卸関係者の方々が面白いと感じてくださり、季節外れにもかかわらず棚を作ってもらえたことが大きい」(フマキラー)。
特に売れたのが、年末の大掃除期だ。「ゴキブリは冬にいなくなるわけでなく、見えないところでじっとしているだけ。その弱っているタイミングを狙ってスプレーし、家具の奥にいるゴキブリを一掃することで夏の発生をある程度防ぐことができる」(フマキラー)。こうした使い方を提案し、大掃除用の洗剤などと並べて陳列したところ、「大掃除用洗剤の単価はそれほど高くないこともあって、意外に買っていただけた」(同)。つまり、大掃除用洗剤の“ついで買い”だったのだ。そのときに効果を実感した人が、夏の本番シーズン前にも購入したため売れ続け、年間定番商品になりつつあるのだという。
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