一方、若い世代へのマーケティングでは、やはりネットが重要なメディアになる。すでにApple Musicなど月額定額制の音楽配信サービスでもザ・ビートルズは配信されている。以前と比べてザ・ビートルズに触れる機会は確実に増えている。

 SNSによる拡散にも力を入れている。実はザ・ビートルズには、フェイスブック、ツイッター、インスタグラムのすべてに公式アカウントがある。最近は『サージェント・ペパーズ』の録音風景などを投稿して、フォロワーを増やしている。SNSのなかでもインスタグラムは、フェイスブックなどに比べて若い世代が活用しているとされているが、そのインスタグラムですでに100万人以上のフォロワーを集めている。「SNSでポールが映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』の最新作に出演するニュースを投稿したら、瞬く間に“いいね”が押されて拡散してました。SNSによる拡散は、必ず若い世代に刺さっている」と多田さんは実感している。

 もちろんネットだけでなくリアルも大切にしている。50周年エディションの発売に合わせて、東京・渋谷と大阪・梅田に期間限定(6月4日まで)の「ザ・ビートルズ オフィシャル・ポップアップ・ストア」をオープンした。販売するアイテムはTシャツやトートバッグなどで、若い世代にも十分アピールできるデザインとなっている。「偶然通りかかった方にビートルズとの出会いの場を提供し、ファンになってもらいたい」と多田さん。

 このほか地道だが、日本の若いバンドにザ・ビートルズの魅力を伝える活動も続けている。バンドのファンがザ・ビートルズに興味を持ってもらえれば、ファン層の拡大につながるのは間違いない。50周年エディションの特設サイトには、著名人のコメントを紹介するコーナーがあり、「THE ALFEE」の坂崎幸之助さんらに加えて、バンド「lovefilm」の石毛輝さん(1984年生まれ)、女優の杏さん(1986年生まれ)らがコメントを寄せている。今後特設サイトでは、若い日本のバンドがザ・ビートルズについて話す対談などを掲載予定という。

 多田さんは「僕たちは、ザ・ビートルズの魅力をコアなファンだけでなく若い世代に伝えるのも大切な仕事だと思っています。さらに言うなら、ザ・ビートルズが活躍していた時代そのものを販促活動を通じて伝えたいと考えています。今回のアルバムは、50年前のものですが、何か熱く訴えるものが必ずあります。ぜひとも50周年を機にザ・ビートルズを耳にしてほしいです。ジャケットを含めたアルバムの姿も目にしてほしいです!」とプロモーションの目標を語った。

 では、若い世代は現在、どのようにザ・ビートルズと出会い、そして受容しているのか? ミュージシャンの吉田省念さん(1980年生まれ)と小説家の滝口悠生さん(1982年生まれ)に話を聞いてみた。

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