『サージェント・ペパーズ』の場合は、ザ・ビートルズが演じる架空のバンド「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」のライブを再現するという演出がなされている。アルバムは、ライブに訪れた観客の喧騒から始まり、メンバー紹介や観客の拍手なども収録されている。こうした演出は当時としては斬新で、人々を驚かせたに違いない。148週間、英国のチャート内にとどまり続けた事実がそれを物語っている。そして、ローリング・ストーン誌が選ぶオールタイムベストアルバム500の見事1位に選ばれるなど、ロック史上で最も重要な作品の1つになった。
たくさんの有名人・著名人が並ぶジャケットのデザインも斬新だった。当時のサイケデリックムーブメントの影響を受け、カラフルな軍服を着たザ・ビートルズの4人の周囲には、マリリン・モンローやカール・マルクス、アルベルト・アインシュタインなどが並んでいる。また、ジャケットの裏面には、歌詞が印刷されているのだが、これもザ・ビートルズが初めて。それまで英国や米国では歌詞を購入者に印刷物として提供するという概念がなかったという。
今回の50周年エディションもしくはニュー・ステレオ・ミックス『サージェント・ペパーズ』を試聴してみると、ボーカルや楽器のそれぞれの音がきちんと聴こえるのはもちろんだが、音全体が前に向かってくる印象を受けた。というのも、オリジナル版や2009年に発売されたリマスター版を聴くと、音が右側に集まっている。正直なところイヤホンで聴くと最初は少し違和感がある。50周年エディションもしくはニュー・ステレオ・ミックスでは、この右側集中が軽減されており、かなり聴きやすい。
ユニバーサル ミュージックのビートルズ担当である多田行德さんは、「今回のリミックス版は今の人にも聴きやすいと思いますよ」と話す。「うち(ユニバーサル ミュージック)の若い社員にもかなりハマっている人がいます」とも。
ネットでリアルでザ・ビートルズを伝える!
音楽の聴き方が50年前とは大きく変わった現代、若い世代にザ・ビートルズの魅力をどのように伝えているのだろうか? 以前なら、思春期を迎えると洋楽に興味を持ち、その結果ザ・ビートルズを聴く──という流れもあったが、現在ではこの方程式は成り立たなくなっている。おそらく親の影響でザ・ビートルズを聴く人も減っているだろう。
そこで多田さんのチームは、今回の50周年エディションの販促活動でも、コアのファンと同様に若い世代にもザ・ビートルズを知ってもらうマーケティングを展開している。まずコアなファンには、音楽専門誌や新聞への広告出稿をメインにマーケティングを行った。4月6日の朝日新聞にはカラーの全面広告を掲載。その広告の写真がネットにアップされるなど、話題になった。
Powered by リゾーム?