ゲーム機の姿を勝手に想像し企画がスタート

 OVER FENCEの開発チームによると、めく~るの開発はおよそ3年前から始まった。当時の据え置きゲーム機市場は、美しいグラフィックやリアルな映像表現にこだわったゲームが中心。ハリウッドの大作映画並みの資金と、数百人の開発スタッフが投入される大作ソフトが市場を席巻していた。

 OVER FENCEは、もともとコンシューマーゲームの開発に携わってきたスタッフを抱えていたが、企業体力がないためコンシューマー市場には参入せず、スマートフォンを舞台とするソーシャルゲーム市場で戦っていた。しかし、そこにも過当競争によるレッドオーシャン化の気配が漂い始めていた。

 そんな中、任天堂が後のNintendo Switchとなる新ハードを開発しているという噂を聞きつけ、つてをたどってゲーム開発を打診したところから話はスタートする。もちろん、まだゲーム機本体は影も形もない段階だ。打診した後も、任天堂からハードの中身に関する情報はまったくもらえなかった。それでもOVER FENCEは大胆な賭けに出た。Wii Uの形などから、数年後に発売されるゲーム機は「手元にコンパクトな画面がある据え置きゲーム機」の進化形だろうと予想。それに似合うゲームの企画に着手したのた。

 冷静な読みもあったという。当時の据え置きゲーム機は、熱心なゲームファンが自分の部屋に置いて楽しむ機器になっていた。しかし、もともと任天堂が作っていたのは家族で楽しめる「ファミリーコンピュータ」。同社のスタッフは、「任天堂は再びリビングで楽しむゲーム機を作るのではないか」「親と子が一緒に遊べるようなゲームを提案するのではないか」「それならばタッチパネルではなく、物理ボタンを使用するはずだ」と考えた。コンシューマゲームの開発経験を持つスタッフを多く抱える同社は、任天堂が目指すであろうゲーム文化の在り方から予想していったのだ。

 こうして生み出した企画が、左スティックとワンボタンだけで楽しめる4人対戦型ゲームだった。このアイデアは任天堂からも「これはいいですね」と評価されることになる。新ハードを発売するに当たり、多くのパブリッシャー、特にソーシャルゲームのノウハウを持つ企業の参加を期待していたであろう任天堂の思惑ともピタリと合致したのかもしれない。

 2016年にNintendo Switchが正式に発表され、ゲーム開発用の本体が届いたとき、同社は全員でガッツポーズをしたという。「コントローラーが着脱式であることを除けば、事前の予想は、ほぼ的中していた」とOVER FENCEの香月薫児会長は振り返る。こうして、本体を目にしてから企画を練りはじめた他社よりも、一歩も二歩もリードを奪うことに成功したのだ。