関東の私鉄各社が「リノベ+サブリース」サービスの展開を進めている。沿線および周辺地域の空き物件を借り上げて改修(リノベーション)し、転貸(サブリース)する仕組みだ。
2013年に総務省が発表した5年に1度の「住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家率は13.5%。空き家戸数は820万戸で、都内は82万戸といずれも過去最高となるなど深刻化している。そんななか、空き家を抱えるオーナーと沿線利用者の増加を狙いたい鉄道会社のニーズが合致した形だ。
京急電鉄は、東京23区と横浜市で空室1年以上の築古物件(築30年以上)のみを期間限定で借り上げ、初期費用ゼロでリノベしサブリースするサービス「カリアゲ」とタッグを組んだ「カリアゲ京急沿線」の第1弾を3月20日に発表した。リノベ+サブリースの先駆者ともいえるカリアゲとともに沿線を中心に空き家・空室を再生させ、土地の利活用を図る。
カリアゲ京急沿線は、京急電鉄、京急不動産、京急リブコ(神奈川県川崎市)の京急グループ3社とカリアゲを運営するルーヴィス(横浜市)が業務提携し、2017年4月にスタートした。京急電鉄が京急沿線の空き家や空室を6年間借り上げ(マスターリース)、サブリース時の賃料の42カ月分を上限に改修費用をオーナーに代わって負担。リノベーションした上で転貸するサービス。戸建て、マンション1室から対応可能で、基本的に新耐震基準(1981年6月1日改正)で建てられた物件を条件にしている。
経年劣化による修繕や設備交換、退去後の原状回復もオーナー負担はなく、クレーム対応も代行してくれる。6年間は部屋の稼働状況にかかわらず、毎月賃料の1割がオーナーの収入になる。ルーヴィスの福井信行社長によると、「築古で空室1年以上の物件のほとんどが相続物件。オーナーは相続したものの古くて活用できないが、手放すのは心苦しいと固定資産税のみを支払っていることが多い」という。
「1割と聞くと少ないように感じるが、固定資産税分にはなる」と福井社長。これまで古くて貸しづらかった物件をオーナー負担ゼロでリノベーションし、資産価値を上げることで収益物件に変える。京急電鉄とのマスターリースが終了すると、資産価値の上がった物件が手元に残り、その後の賃料は全額オーナーのものになる。
カリアゲ京急沿線第1弾は、京急本線のエアポート急行停車駅「能見台」駅(横浜市金沢区)から徒歩約7分の分譲地の一角にある築25年の木造平屋。51.75平米の間取りはそのままで水回りを全て新しくしたが、照明はトップライトをそのまま採用するなど既存の物も活用している。賃料は9万9000円。改修前は3年間空き家のままだったが、多数の問い合わせがあり反応は良いという。
同時期に完成した京急空港線「穴守稲荷」駅(東京都大田区)から徒歩3分にある「羽田のテラスハウス」(128.77平米)は賃料が16万8000円で、募集からまもなく入居者が決まった。今後は能見台駅周辺でさらに2件(マンション1部屋、店舗)のリノベーションを予定しており、秋頃から入居者を募集する予定だという。
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