子どものカフェイン摂取を専門家が懸念
これまでのカフェインの健康に対する調査は主に成人が対象で、適度な量のカフェイン摂取はエネルギー消費量の増加、身体能力の向上、疲労減少、瞬発性の向上、認知機能の強化、集中力と短期記憶の向上につながることが示されています。半面、過剰に摂取すると心拍数や血圧の上昇、睡眠障害、動悸や胃のむかつきなどを引き起こすことが分かっています。
しかし成人に現れるカフェインのこうした作用が、子どもにも同等に表れるのかどうかは、明らかにされておらず、現在、子どもや若者を対象にした研究が進められています。以下の7項目から見ていきましょう。
[1]血圧や脈拍への影響
カフェインが子どもの血圧を上げ、心拍数を減らすことがこれまでの研究で示されています。ただし、思春期以降は男女差があるようです。
ニューヨーク州立大学バッファロー校の研究者らは、思春期前(8~9歳)の子ども52人と、思春期後(15~17歳)の男子49人と女子47人を対象に、カフェイン摂取が、心拍数と血圧に与える影響を調査しました。
結果、思春期前はカフェインによる心拍数と血圧の反応に男女差はなく、思春期後は男子は女子よりカフェインによる反応が高まりました。また、思春期後の女子の場合、月経周期の黄体期(排卵から月経まで)中期にカフェインを摂取すると心拍数が減少し、卵胞期(月経が始まってから排卵まで)中期は血圧の上昇率が大きくなりました。
カフェインに対する反応の性差は、ステロイドホルモンのレベルなどの生理学的な因子によるものか、それとも心理社会的な因子によるものかを確認するために、さらなる研究が必要ではないかと研究者らは論じています。
American Academy of Pediatrics「Cardiovascular Responses to Caffeine by Gender and Pubertal Stage」
[2]睡眠障害
オハイオ州立大学の研究者らは、1日あたり平均53mg(0~800mg)のカフェインを摂取している191人の中学生を対象に、14日間の睡眠パターンとカフェインを含む食品の摂取について調査しました。結果、カフェインの摂取は夜間の睡眠時間が短くなることと関連していました。参照までに、日本で販売されている「ペプシコーラ」は100mlあたり約10mgのカフェインを含んでいると表示されており、500mlのペットボトルの場合、約50mgが含まれていることになります。
US National Library of Medicine National Institutes of Health「Caffeine consumption and weekly sleep patterns in US seventh-, eighth-, and ninth-graders.」
[3]脳内報酬系への影響
カフェインは、脳内報酬系の発達に作用し、将来の食品や飲料の好みに影響を与える可能性が指摘されています。ただし、この影響にも性差があるようです。12~17歳を対象にしたニューヨーク州立大学バッファロー校の報告によると、男子は女子より、カフェインの影響をより受けやすい可能性があるといいます。
US National Library of Medicine National Institutes of Health「Sex differences in reinforcing value of caffeinated beverages in adolescents.」
[4]カフェインの離脱症状(副作用)
英国ブリストル大学の研究者らは、9~11歳の26人を、カフェインを習慣的に摂取(平均109mg/日)しているグループ、していないグループ(平均12mg/日)の2つのグループに分けて調査。両グループともに一晩カフェイン断ちをした後、カフェイン50mgを与えました。カフェインを習慣的に摂取しているグループは、頭痛が起き、認知力が鈍くなるといった離脱症状が現れていましたが、カフェインの摂取でこれらが収まりました。一方、カフェインを習慣的に摂取していないグループは、認知機能、注意力や頭痛など、摂取前後で顕著な変化はありませんでした。
US National Library of Medicine National Institutes of Health「Psychostimulant and other effects of caffeine in 9- to 11-year-old children.」
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