“浅い呼吸”が体に及ぼす影響とは?
普段の生活の中で、呼吸を意識することはあまりないかもしれない。しかし、呼吸によって体内に十分な酸素を取り込むことは、健康を維持するために大きな役割を担っている。「酸素は、脳や心臓など、体内の重要な臓器が正常に働くために必須です」(大谷先生)
呼吸は、肺を取り囲む横隔膜(呼吸筋のひとつで、肺のある胸腔と大腸や小腸がある腹腔をつなぐ筋肉)や肋間筋(肋骨の間にある筋肉)といった呼吸筋が肺を収縮・拡張することで行われている。
しかし、「スマホ巻き肩(ネコ背)になると、胸部が圧迫されて呼吸筋の動きが阻害される。毎日何時間もスマホを使用し、スマホ巻き肩が常態化してしまうと、呼吸筋はどんどん衰えて肺年齢(呼吸機能の程度)も上がってしまう」と大谷先生は言う。
実際に、33歳の男性を対象にスマホを使用しているときとそうでないときの肺活量と気道抵抗(気道の空気の通りづらさ)を測定し、肺年齢を比較したところ、通常の姿勢のときは肺年齢が18歳だが、スマホを使用しているときは41歳という結果になったという。「スマホ巻き肩が肺年齢を大幅に上げていることが分かりました」(大谷先生)
「肺年齢の上昇とともに、肺活量は低下していきます。そうすると、体内に必要な酸素を取り込めなくなり、さまざまな不調が引き起こされる可能性が高まります」(大谷先生)
たとえば、スマホ巻き肩による肩コリや首コリも、原因の根本は酸素量の低下であるケースがあるという。「酸素が足りないと、脳や心臓といった重要な臓器へ優先的に酸素が運ばれるため、肩や首の筋肉の血流が滞り、血液中から老廃物が排出されず、コリがなかなか解消されないのです」(大谷先生)
そのほかにも懸念されるのが、慢性的な疲労感だ。「炭水化物などの栄養素をエネルギーに変換するために必要な酸素が足りないので、エネルギー生成がうまくできずに、疲れやすくなると考えられます」(大谷先生)
また、脂肪を燃焼するには酸素が必要なので、酸素不足だと脂肪燃焼が阻害されてやせづらい体質になったり、横隔膜の動きが鈍くなって腸への刺激が減り、便秘になりやすくなったりすることもある。
「人は1分間で約15回、1日で約2万回呼吸をしているといわれています。人生を80年と仮定すると、一生の内で約6億回も呼吸をしていることになります。一日だけ呼吸が浅くなっても、体にはそれほど影響がありませんが、スマホを使い続けることで浅い呼吸が日常化すれば、体はつねに酸素不足の状態になり、さまざまな不調が表れてくるのです」(大谷先生)
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