なるほど、うんこ川柳がライフワークだった。

古屋: それから月日が経って、2015年の初めだったと思いますが、今回のドリルを出版した文響社の山本周嗣社長から「うんこ川柳を書籍化しないか」と声がかかりました。実は彼と僕、そして「夢をかなえるゾウ」「人生はニャンとかなる!」などヒット書籍の著者である水野敬也氏は中学・高校時代の同級生だったのです。仲の良い同級生からの思いもよらぬオファーに、僕は小躍りしました。「なるほど、今なのね」と(笑)。早速、「四季を感じるうんこ川柳」「生活に密着したうんこ川柳」など、本の構成を考えながら、制作を進めていきました。

うんこ川柳の制作を進めていたわけですね。

古屋: 僕は「うんこ川柳の書籍化」という長年の思いを実現するために突っ走ったのですが、あるとき、山本から「古屋、これはちょっと売れないかもしれないな」と、ストップがかかったのです。彼は出版社の社長として、もっと世の中に受け入れられるものを作りたいというビジネス視点があったのだと思います。そして、「うんこ川柳を使って漢字を覚えられるドリルにできないか」と提案されました。

 それを受けて、うんこ川柳の例文をコツコツ作っていったのですが、そのうち山本から「古屋、うんこ川柳は一度忘れて、川柳なしでうんこの例文を作ってくれ」という身もふたもない要望が来たんです(笑)。ただ僕もその時点では「面白い例文になれば川柳にこだわる必要はないかもしれない」と思いました。そこでようやく、小学校で習う1006字の必修漢字それぞれに対して3つずつ、合計3018の例文を掲載する、現在のうんこ漢字ドリルの体裁が決まったのです。

“3つの工夫”で「うんこ」を受け入れやすくした

3018もの例文を「うんこ」という言葉を使って作る作業は大変だったと思いますが、何に一番苦労しましたか。

古屋: 面白い例文を作ることはもちろんですが、ほかにも“3つのルール”を設けました。

  まず、うんこを「食べる」、あるいは「くさい」といった想像すると嫌悪されるような例文は避けること。例えば、「カレーだと思って食べたらうんこだった」という例文は具体的にイメージできてしまい、気持ち悪いですからね。

  あと、物質としてのうんこの汚さをなくすような表現にも心がけました。「春らしい色のうんこだ」「うんこにも羽が生えたらいいのに」などはその代表例。具体性を極力そぎ落とし、抽象化することによって、うんこの生々しさやリアリティーを薄める工夫をしていったわけです。

  さらに、「友だちのカバンにうんこを入れた」「君のうんこを見て気持ち悪くなった」など、いじめにつながるような例文は避け、「君のうんこを見たおかげで元気になった」と、ポジティブな例文になるように工夫しました。

  嫌悪感をなくすこと、生々しさを薄めること、ポジティブな例文にするという3つの工夫によって、子どもだけでなく親も受け入れやすくなったのではないでしょうか。