日本酒に新しい味わい方のカテゴリーを作りたい

 和賀本部長によると、凝縮 Hは2016 年春に開催された伊勢志摩サミットに向けて、日本の技術力をアピールすることを目的に開発した製品だという。そのため地元の三重県で、国内外の品評会やコンテストで数えきれないほどの受賞歴を持つ実力派の酒蔵・清水清三郎商店に協力を依頼した。「凝縮 H」は伊勢志摩サミットの席上で試作品が提供され、話題を呼んだそうだ。

 ただし、日本酒を濃縮するためにはさまざまな課題があった。市販の清酒の平均的なpHは4.2~4.7程度で酸性だが、従来のゼオライト膜は耐酸性が低かった。また含水率が高い物質だと構造が壊れるという問題もあった。そこで幅広い食品に応用できるようにゼオライト膜の構造を根本から再設計。水分85%、pH4.5の日本酒の脱水に成功してできたのが「凝縮 H」だという(同技術の初商品化は2014年3月に香川県の西野金陵から発売された「琥珀露」)。

 清水清三郎商店の清水慎一郎社長は、「“日本酒の食後酒”という新しいカテゴリーを提案したい」と意気込む。「日本酒ブームとはいえ、まだまだ飲まず嫌いの方も多い。グラッパやリモンチェッロのように、食後酒の感覚で味わってもらうことで、ワイン好きの方が日本酒の魅力に気が付くきっかけになれば」と期待を寄せる。

  「ゼオライト膜は低温で脱水でき、食品や飲料のおいしさや香りを保ったまま濃縮できる世界初の技術。ワイン、茶、だしなど幅広い液体の濃縮に応用可能で、今後は濃縮が不可能と思われていた液状食品の常識を覆していく可能性を秘めている。透過させるだけなのでエネルギーに負荷をかけず、エコで効率良くうまみ成分を残せるのも利点だ」(和賀本部長)と、三菱ケミカルの期待も大きい。すでに海外では不作で糖度が低いブドウ果汁でワインを作る際、同じ方法で凝縮してから醸造することで自然な甘さに調整する方法が、実用化に向けて研究が進んでいるという。

 清水清三郎商店では2017年中に1000本を製造販売。500万円の売り上げを想定している。販売店は当面1カ所(はせがわ酒店パレスホテル東京店)のみとのことだ。

「凝縮 H」を味わうために作られた特製グラス(8000円~1万円)を紹介する、清水清三郎商店の清水慎一郎社長
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(文/桑原恵美子)

日経トレンディネット 2017年4月24日付の記事を転載]