コーヒーの楽しみ方の多様化に対応
同社によると、このドリッパーを開発した第一の理由は、「コーヒーの楽しみ方の多様化」。サードウエーブコーヒーのブームやコンビニのカウンターコーヒーなど、コーヒーの楽しみ方が広がるなか、コーヒー専業メーカーとして、もっといろいろなコーヒーの楽しみ方を提案するべきではないかと考えたとのこと。
特に今は「コーヒーをいれる手間を楽しみたい人と忙しいので手間を省きたい人の二極化していて、手間をかけたくないが、もっと本格的な味を楽しみたいという中間層への商品があまりない」(本吉氏)。フレンチプレスやエアロプレスなども流行しているが、使いたいと思いつつ、後片付けの大変さから敬遠する人も多い。ポッドを使うことでその手間が飛躍的に改善できると考えたそうだ。
開発で特に苦労したのは、押すフタの部分。この形、この角度、この弾力でなければ、エスプレッソに近い味にならないという。また「エスプレッソは粉が細かいので、劣化しやすい面もある。ポッドを使うことでいつでも新鮮な状態で楽しめるのも大きなメリット。家庭でいれるコーヒーの新しいツールとして定着してほしい」(キーコーヒー広報チームの横瀬典子氏)。
同社ではポッド3個が無料でついたスターターキットを税込み540円と、トライアルとしても気軽に買える価格設定で発売。スーパーのコーヒー売り場では、粉と一緒に器具も置かれているので、抵抗は少ないと見ている。実演販売を積極的に行うほか、ネット通販と連動した情報発信も検討している。
「スターバックスコーヒーに代表されるような、シアトル系コーヒー専門店からブームになったカフェラテが普及し、今やペットボトル商品にもなっている。面倒な器具やマシンを使わず、家庭で手軽にカフェラテ等を楽しみたいというニーズを満たしたい」(本吉氏)という。
筆者はエスプレッソを飲みたいと思って注文しても、酸味が強すぎて飲み切れないことがよくあった。これはコーヒー豆の成分が効率的に抽出されるエスプレッソの場合、特定の味が強く出過ぎると、ほかの味をマスキングしてしまう場合があるためとのこと。だが、このホルダーでいれたコーヒーはかなりエスプレッソに近いのに、それがなかった。
真のエスプレッソ好きにはそこがもの足りないかもしれないが、筆者のように「たまにエスプレッソを飲みたくなるが、マシンを購入してまで飲みたいわけでもなく、手間もかけたくない」というタイプには、まさにちょうどいいツールではないかと感じた。


(文/桑原恵美子)
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