今回のテーマは「心臓のアンチエイジング」。あるひとつのスパイスに含まれる成分がさまざまな効果を発揮することが分かってきた。それは「クルクミン」。心不全の進行も抑えるというクルクミンについて、順天堂大学大学院医学研究科泌尿器外科学の堀江重郎教授と、静岡県立大学薬学部分子病態学分野の砂川陽一助教に解説してもらう。

4月、花見や新人歓迎会などで酒席が増えるこの季節、「ウコン」のお世話になっている人も多いだろう。ウコンがアルコールの分解を速めることは医学的に確認されており、悪酔いや二日酔いを防ぐ効果は広く知られるようになった。
「ウコン」に含まれる有効成分は「クルクミン」という黄色の色素成分。カレーが黄色いのも、ウコンにクルクミンが入っているためだ。その効果は肝機能改善だけではない。驚くべき効果が次々と明らかになり、アンチエイジング医学界で注目を集めている。
まず、がんに対する効果。すい臓がんが改善した(Clin Cancer Res. 2008 Jul 15;14(4):4491-9)など、多くの報告がある。京都医療センター整形外科診療部の中川泰彰部長たちによって、変形性膝関節症に対する効果も報告された。患者に1日180mgの高吸収型クルクミン(セラクルミン)の投与を8週間続けた結果、痛みの強さを示すVASスコアが低下したという(J Orthop Sci. 2014 Nov;19(6):933-9)。
脳に対する効果も研究が進んでいる。クルクミンは脳内のセロトニンを増やす抗うつ作用がある(Psychopharmacology(Berl).2008 Dec;201(3):435-42)。また、アルツハイマー病は脳にアミロイドβ(ベータ)というたんぱく質がたまることで起こるが、クルクミンはこのアミロイドβがたまりにくくする(J Pharmacol Exp Ther.2008 Jul;326(1):196-208)。実際、毎日ウコンを使ったスパイス料理を食べるインドでは、アルツハイマー病の発症率が米国の4分の1しかない。
ウコンには鉄が多く含まれているので大量にとると害があるが、クルクミン自体は安全性が高く、少々とりすぎても危険はないとされている。
なぜクルクミンがこれほど幅広い分野で効果を発揮するのか。最大の理由は「強い抗炎症作用にある」と、順天堂大学大学院医学研究科泌尿器外科学の堀江重郎教授は説明する。
「がんやアルツハイマー病をはじめ、多くの病気が炎症から引き起こされる。クルクミンはNF-kBという生理活性物質の働きを抑えることで体内の炎症反応を抑える」
最近は心臓に対する作用も研究されている。クルクミンによって、心不全が改善する可能性が高いというのだ!
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