飼い主が触れると心拍数に変化が

犬の感情によって色が変化する
犬の感情によって色が変化する

 開発を始めた11年ごろから3年近くは、精度の良い心拍センサーが作れず悩む期間が続いたという。ブレークスルーとなったのは、「心臓の音をマイクで拾う、という発想」(山口氏)。前脚の近くにうまくマイクを密着させ、ノイズを除去して心臓の音だけを拾う、という構造で、心拍センサーの精度を飛躍的に高めることに成功したのだ。

 犬は心拍をコントロールする能力にたけており、運動後にすばやく心拍数を下げられることなどが知られている。しかし、実際に心拍を観察してみると、「飼い主に触れるなどしてリラックスしている状態では、心拍のリズムにばらつきが増える」(山口氏)など、心拍と感情の新たな関係が次々に見えてきた。心拍の数だけでなく、リズムが一定かどうかも重要なのだ。

 そして、知人のつてをたどり数十頭の犬でテストを重ね、「興奮度合い」「喜び」「集中」という3つのパラメーターから、犬の感情を光の色で知らせる機器・INUPATHYを完成させた。3月8日には米国のサイト・Indiegogoでクラウドファンディングを開始している。

開発中のスマホアプリ
開発中のスマホアプリ
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 山口氏は、「スマホを見るより、犬を見たほうがいい」との思いで、当初から本体内蔵のLEDの光で感情を伝える機能を中心に据えてきた。一方で、製品化時には専用のスマホアプリも公開し、犬のさまざまなデータがスマホで確認できるようにする計画。「将来は心拍のデータをもとに、個々の犬に合った最適なしつけや運動を提案できるようにしたい」(同)。人間だけでなく、動物も等しくテクノロジーの恩恵を受けられる社会を――。そんな壮大な夢が、現在の山口氏の原動力になっている。

 INUPATHYを「IoD(Internet of Dogs)」と呼ぶならば、同じ日本人ベンチャー・kakaxi(カカシ)の手がける製品は「IoF(Internet of Farms)」。畑をインターネットにつなげてしまおうというアイデアだ。

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