「South by Southwest(SXSW)」は、毎年3月中旬に米国・テキサス州オースティンで開催される、音楽と映画、最新技術の複合イベント。展示会をはじめセミナー、ライブ、上映会、コンテストなど数千もの催しが行われ、80カ国以上から8万人以上もの来場者を集める。今回はそのなかでも、世界の最新技術とベンチャー企業が集まる「インタラクティブ」部門を取材。世界に打って出る日本企業の動きと、驚くようなアイデアを提示する海外の注目ベンチャーの動きを、現地からリポートする。

SXSW・トレードショーのメイン会場
SXSW・トレードショーのメイン会場
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 SXSWでも花盛りのIoT機器。「Internet of Things」の略で、これまでネットにつながらなかったものにもネット接続機能を持たせ、アプリやクラウドとの連係で新たな価値を付加した製品のことだ。SXSWの会場をざっと見渡すだけでも、キッチンスケールからボードゲームまで、消費者向けのあらゆる商品がIoT化していく流れがよくわかる。

 今回は、そんなIoTのトレンドに独自のアイデアで切り込む、日本のベンチャー企業2社を取り上げる。いずれ劣らぬ、オリジナリティーの高い製品だ。

心拍をもとに犬の感情を分析

INUPATHYの本体。犬用のハーネスと同様に装着する
INUPATHYの本体。犬用のハーネスと同様に装着する

「INUPATHY(イヌパシー)」は、その名の通り、犬に装着するIoT機器。創業者の山口譲二氏が、「犬は人の気持ちがわかるのに、なぜ人は犬の気持ちがわからないのだろう」という思いから、5年以上もの時間をかけて1人で作り上げた製品だ。

創業者の山口譲二氏
創業者の山口譲二氏

 結婚を期に、妻の飼い犬と同居を始めた山口氏。犬とのコミュニケーションについて興味を持ち、調べるうちに、犬は人間の表情のみならず視線まで読んで状況を判断でき、人間の声色さえも正確に聞き分けられることを知った。しかし人間は、せいぜい犬が尻尾を振っていたり、ほえていたりといった情報からしか犬の気持ちを読み取ることができない。

「こうした情報なしで、犬の気持ちをもっと知ることはできないのか」。独学で研究を進めた山口氏は、心拍のデータを使うというアイデアにたどり着く。とある書籍で、心拍計を付けた犬をさまざまな状況に置き、心拍の変化を観察する、という研究が紹介されていたのがきっかけ。自分もやってみようと思ったが、犬用の心拍計は専門医が使うものしかなく(しかも毛をそる必要がある)、人間用の心拍計を飼い犬に着けてみたが、うまく測れなかった。そこで山口氏は何と、犬用の心拍センサーを自分で一から作ることにしたのだ。

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