湯河原なのに"Tokyo"の理由は検索されやすさ!?
TRT湯河原は、JR「湯河原」駅からバスで10分、さらに急な坂を10分ほど上った高台にある(湯河原駅からシャトルバスを1日6往復運行)。中心地からはずれた少し寂しい温泉街の中に突如現れたド派手な外観にまず度肝を抜かれた。以前は保養所だった建物を外国人観光客向けに思い切ってリノベーションしたそうだ。
湯河原を第一棟目として選んだのは、関西国際空港と成田空港を結ぶ「ゴールデンルート」上に位置しており、人気の箱根、熱海、富士山にも行きやすい場所であること。また品川から90分、新幹線だと60分と便利な場所でありながら、観光地化され過ぎず、日本の古い温泉街のよさを併せ持っている場所だからだという。
「日本各地にはバブル期のしっかり作られている建物が遊休物件として数多く眠っている。そうした遊休物件をリブランドし、外国人観光客向けの宿泊施設として全国展開していきたい」(藤澤しずか女将)。同旅館はその第1棟目であり、まずはここを成功させてモデルケースにしたいと意気込む。
そこで素朴な疑問が。地方を中心に展開する目論見なのに「The Ryokan Tokyo」というブランド名にしたのか。聞けば、同旅館はSNS発信でのクチコミを狙っており、「湯河原 旅館」より、圧倒的に「東京 旅館」のほうが検索されやすいからだという。同じ理由で、ロビーまわりには日本各地の観光地を描いた“撮影スポット”を多数用意。記念撮影をしたくなるようなコスプレ衣裳を用意し、華道、茶道、着付け、書道、和菓子、工作系など、さまざまなアクテビティを予定している(有料)。どれも記念写真での拡散率は高そうだ。
内覧会当日は、外国人観光客向けの書道講座やけん玉、独楽(こま)の実演、陶器の絵付けチャレンジなどさまざまな催しがあった。どれもやってみたら意外に難しく、日本人も楽しめる宿ではないかと思った。
The Ryokan Tokyoはバブル期に建てられた地方の遊休物件を積極的に活用していきたいというが、グリッツ東日本橋イーストもまた、都内に増えている空きオフィスビルの利用が展開の大きなカギとなっている。今後もこうした空きスペース利用のインバウンド宿泊施設は増加していきそうだ。
(文/桑原恵美子)
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