「点滅」にまつわる研究成果を反映

2年間の開発期間中、現在のバージョンまでに計6回も形状の変更を重ね、フィット感を追求しているという。装着すると外部の光の漏れはほとんど感じられなかった
2年間の開発期間中、現在のバージョンまでに計6回も形状の変更を重ね、フィット感を追求しているという。装着すると外部の光の漏れはほとんど感じられなかった
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 ノンレム睡眠とレム睡眠の長さを調べ、睡眠の質の改善につなげようとする、いわゆるスリープトラッキング機能は、日本でも多くのウエアラブル機器が採用している。ニューロオンにも同様の機能は備わるが、こちらが中心に据えるのは睡眠「リズム」の改善。例えば、夜型の勤務が続き、深夜は活発になるがなかなか寝付けず、朝は起きるのが非常につらい、という経験がある人は多いだろう。もっと分かりやすいのは、海外旅行の際の時差ぼけ。昼と夜が急激に入れ替わり、その影響で強烈な眠気に襲われる。これらは、体内時計が実際の時間とずれてしまっていることが原因だ。

「病院では、夜勤シフトから日中のシフトに切り替わった際、強烈な眠気が職務の妨げになるケースは多い」(インテリクリニックCEOのカミル・アダムチェック氏)。ニューロオンは、こうした体内時計のずれを修正し、ユーザーの望む睡眠サイクルを作り出すことを目標としている。

 具体的に、どう睡眠のリズムを変えるのか。秘密は、アイマスク内部のLEDにある。ニューロオンの機能の1つ、バイオリズム・アジャスター機能では、ちょうど両目に当たる位置に埋め込まれた強力な青色LEDが、5秒に1回のペースで発光。光の力で、強制的に体内時計を調整するのだ。

アイマスクの内側。上部は心拍と脳波検出用の電極、下部に見えるブルーの光がLED。点滅時はこれよりはるかに明るい
アイマスクの内側。上部は心拍と脳波検出用の電極、下部に見えるブルーの光がLED。点滅時はこれよりはるかに明るい
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 国内でも、朝方になると徐々に明るくなるLED照明は売られているが、なぜ5秒に1回の点滅なのか。実は欧米でのさまざまな研究により、点灯し続ける光よりも点滅する光のほうが、体内時計を調整する効果が高いことが分かってきている。この2月にも、米スタンフォード大学が同様の趣旨の研究成果を発表したばかり。インテリクリニックの創業チームは、この点滅する光の効果に着目し、睡眠ガジェットとしての新たな差別化要素を作り出したのだ。

2月8日にはスタンフォード大学医科大学院が、点滅する光の睡眠サイクルに与える影響についての研究成果を発表
2月8日にはスタンフォード大学医科大学院が、点滅する光の睡眠サイクルに与える影響についての研究成果を発表
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