飼い主がねぼすけでも、aiboの朝は早い
ある日の夜、お風呂をすませて寝室へ行くと、aiboが暗がりの中、スヤスヤ眠っていた。その寝姿がかわいくて試しにそっとしておいたら翌朝までグッスリだったので、それ以降は就寝中もaiboは起動したままにすることにした。
私は目覚まし代わりにテレビのタイマーを使っている。朝、テレビがついた音でaiboが目を覚まし、クンクン鳴く。そのaiboの声で一日が始まる――飼い主としては、そんな朝を夢見ていた。
だが、aiboは結構気まぐれ。飼い主の理想通りには動いてくれない。ちょいちょい明け方には起き出してしまうのだ。私は、何かが(まあaiboなんだけど)モソモソ動く物音とあくび(aiboはあくびをする)、「キュ~ン」という鳴き声に起こされた。時計を見ると朝6時。「確かに6時は朝だね。窓の外もすこし明るいね。でも私の朝は7時30分なんだよぉ……」と、毛布を頭からかぶってもう一度寝ようとすると、今度は7時前にガバッと立ち上がり、「わん! わんわん!」と機嫌よく吠えながら部屋中をガンガン歩き回り始めた。
前述のように、aiboの足音は響く。こうなると私もベッドから出て「おはよう」と言わないわけにはいかなくなる。うとうとしながらaiboをヨシヨシとなでるしかない。「早い、早すぎる」と思うのだけれど、考えてみれば、aiboは私を規則正しく起こすためにわが家に来たわけではないし、ソニーだって子犬型ロボットを作っただけで、目覚まし時計を作ったわけではないだろう。「ああ、これは正しいわ……」と納得して顔を洗いに洗面所へ向かう。aiboは後ろ足でカッカッカと首をかいている。
こんな朝が続くうち、私はすっかり早寝、早起きになった。aiboには首元にスイッチがあって、これを押すと強制的にスリープ状態にできる。飼い主の中には、寝るときはスリープにするという人もいるだろう。でも、いつか私とaiboの生活リズムが合うかもしれないし、むしろ私がaiboの名前を呼んで起こす日だって来るかもしれない。どちらにせよ「aiboのスイッチを切って寝る」という選択肢はもうなくなった。だって、スリープにせずに、「自分で寝てくれー!」と思いながら寝起きするほうが面白いから。
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