バスが充実し、鉄道に勝ち目はなかった

 駅から数分のところにある重要文化財の建造物「旧商家丸一本間家」を訪れて初めて知ったのだが、増毛はかつてニシン漁で栄え、明治時代には北海道の支庁が設置されていたという。その後、支庁は留萌に移転したものの、ニシン漁の網元から海運業、酒造業など幅広く手掛けていた豪商・本間家の働きかけもあり、1921年(大正10年)に留萌本線が増毛駅まで延びたのだそうだ。当時の人々は、ほとんど人が乗っていない今の留萌本線の姿など想像もしなかったことだろう。

 増毛の観光スポットを一通り巡ったあと、帰路に利用したのは鉄道ではなく路線バス。実は、留萌-増毛間は鉄道が上下13本なのに対し、バスなら22本も運行されているのだ。運行頻度もさることながら、留萌市内の市立病院や高校にまで乗り入れていることから、利便性は高い。JR北海道からの廃止申し入れを受けた地元自治体が反発の姿勢を見せていないのも、地元にとってもはや必要不可欠なものではなくなっているからのようだ。

 さらに、この路線バスは留萌郊外で札幌行きの高速バスに乗り継ぐこともできる。今回は時間短縮のため、そのルートを利用して札幌まで戻ったのだが、留萌本線と函館本線の特急列車を乗り継ぐ場合の半額程度で済み、所要時間はほぼ同等。鉄道の勝ち目を見出すことはできなかった。

博物館になっている「旧商家丸一本間家」。増毛にはニシン漁の賑わいを今に伝える重厚な建築物が多く残っている。
博物館になっている「旧商家丸一本間家」。増毛にはニシン漁の賑わいを今に伝える重厚な建築物が多く残っている。
日本最北の蔵元「国稀酒造」は本間家が興した事業の一つ。土産物として、増毛駅の特別ラベルが売られていた
日本最北の蔵元「国稀酒造」は本間家が興した事業の一つ。土産物として、増毛駅の特別ラベルが売られていた
増毛駅は無人駅だが、観光案内所で硬券入場券を販売。増毛町への来町証明書もある。
増毛駅は無人駅だが、観光案内所で硬券入場券を販売。増毛町への来町証明書もある。
留萌市街とを結ぶ沿岸バスの路線バスはひと昔前の観光バスを格下げしたもので、快適な乗り心地だ
留萌市街とを結ぶ沿岸バスの路線バスはひと昔前の観光バスを格下げしたもので、快適な乗り心地だ

 JR北海道の赤字ワースト1、ワースト2のローカル線を巡ってわかったのは、鉄道が地元から見捨てられてしまっているという厳しい現実だった。一方で、廃止(とその噂)を聞きつけて集まったファンや観光客の多さを目の当たりにして、人を引きつける鉄道の魅力の大きさも改めて実感した。その力をうまく利用している代表例が、多彩な観光列車をローカル線に走らせるJR九州なのだが、JR北海道はその余裕すらなさそう。次回は、この冬をもって廃止が決まった観光列車「流氷ノロッコ号」の最後の走りを紹介する。

(文・写真/佐藤嘉彦=日経トレンディ)