2016年3月26日、北海道新幹線が開業し、いよいよ北の大地に新幹線が走り出す。新幹線開業という華やかな出来事に隠れがちだが、北海道では在来線列車の大幅削減という大なたも振るわれる。

 北の大地に今、何が起きているのか。前回の「北海道新幹線開業の“影”!? 消えゆく夜行列車『はまなす』に乗ってきた」に続き、今回は超赤字ローカル線に乗ってきた。

1日1本しか列車が来ない駅が出現

 3月26日には北海道から1日79本もの普通列車が姿を消す。対象となる路線は、札幌近郊を除いた、いわゆるローカル線。全体の15%ほどを削減するという厳しい内容だ。

 JR北海道によると、約30年前の会社発足以来、運転本数はほとんど見直してこなかったという。一方、東京や札幌への人口集中が加速し、ローカル線の利用客は減少傾向。現在では乗客数が約10人以下というガラガラの列車が全体の2割を占めるに至っている。

 加えて、車両の老朽化の問題も追い打ちをかけた。JR北海道が主力として使っているディーゼルカー「キハ40系」は、国鉄時代の1970年代後半から1980年代前半にかけて製造された車両。車齢が30年を超え、故障が目立つようになっているという。本来ならば後継となる車両を造らなければならないが、乗客数が少ないため、とても採算が合わない。そこで、使用に耐える車両だけで運行できるよう、列車本数を削減することにしたのだ。

キハ40系は国鉄時代に大量に製造されたローカル線向けのディーゼルカー。北海道から九州まで各地で運行されている。ちなみに、JR九州の観光列車の多くはこの車両を大幅に改造したものだ
キハ40系は国鉄時代に大量に製造されたローカル線向けのディーゼルカー。北海道から九州まで各地で運行されている。ちなみに、JR九州の観光列車の多くはこの車両を大幅に改造したものだ

 その内容は容赦ない。例えば、道南の長万部駅はニセコ方面へ向かう函館本線と洞爺方面へ向かう室蘭本線の分岐駅だが、両線とも早朝の普通列車が出ると昼過ぎまで普通列車がなくなる。北海道最北端の稚内駅では、到着する普通列車が1日わずか3本に。朝8時の次は昼の12時、その次はもう夜の19時半で、これが最終列車になる。

 さらに驚きなのが、札沼線の浦臼~新十津川間だ。運行列車はこれまでの1日3往復から、わずか1往復となる。通勤・通学客のことを考えれば、最低でも朝と夕方の2本は必要なはず。1本では乗ったっきり、その日のうちに帰ってくることはできないからだ。もはや、「とりあえず廃線にはしないので、1本だけ走らせておきます」というJR北海道の“アリバイ作り”としか思えないダイヤだ。

 1日1本の列車になる終着駅・新十津川駅とはいったいどんな駅なのか。前回紹介した急行「はまなす」号で札幌駅に着いたあと、札沼線に乗り換えて向かってみた。

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