泣きツボは人それぞれにある!

 終了後にイケメソ千葉氏に話を聞いてみた。

――動画観賞の際に千葉さんも涙ぐんでいましたが、もともと涙もろいのでしょうか。

感涙療法士、イケメソの千葉司さん

千葉氏: 「いいえ、実はこの活動を始める前までは最後に泣いたのが葬儀に参列した5年前、その前が15年前の卒業式なんです」

 この2回はどうしても我慢ができなかったが、それまでは小さい頃から男は泣くものではないという先入観があり、泣きたくても感情を押し殺していたという。

千葉氏: 「昔から少林寺拳法をやっていて、“男らしくあること”を植えつけられていたような……。でもこの活動を始めてから、涙が出るようになりました」

 あまり汗をかけない体質の人が、サウナに通い始めたら汗が出るようになった、というようなものなのだろうか。

――以前見たことがある動画が出てきても泣けますか?

千葉氏: 「僕も最初は、始まった瞬間に、あ、これ見たことあるから泣かないんじゃないかなと思っていました。でも、見たことがあるものでも、前回泣いてしまったものは、もう一度見ても泣けてくるんです。人それぞれに泣きツボがあるんだと思います」

――今まで宅泣便で派遣されて、印象に残っている企業はありますか?

千葉氏: 「イベント会社を訪問したときですね。コンサートの企画などを手がける企業だったのですが、女性社員がバリバリ働いているところでした。第一線で働く女性は男性と同じで泣きごとは言えない。でも、宅泣便ですっきりしていただけたようで、こちらも嬉しく思いました」

 「イケメソ宅泣便を含めて、企業で、今後も涙活イベントの需要が増えている理由の一つに、ストレスチェックの義務化という背景があります。 過労死や自殺が社会問題になり、うつ病などの精神的疾患を未然に防ごうと、従業員50人以上の全事業所でストレスチェックを実施することを義務化する改正労働安全衛生法が2015年12月に施行されました。しかし、チェックはできても、その後の対応がうまくいっていないというのが現状。涙活はストレス発散に有効な手段ですから、今後も積極的に感涙療法を実施していきたいと考えています。また、将来的には海外でも活動展開したいですね」(寺井氏)。取材当日はアメリカ系の通信社とアジアのテレビ局も取材に来ていた。海外進出もありえない話ではなさそうだ。

 ここ2~3年、広告業界でも「感涙もの」の流行がある。15~30秒のテレビコマーシャルとは別に特設サイトをつくり、3分ほどの“感動モノ”のショートムービーを公開する。そしてそのストーリーはSNSの流行で簡単に拡散されるようになった。このムーブメントは日本だけでなく、世界的な傾向でもある。「感動の涙」というものは人と分かち合いたくなるものなのかもしれない。職場の仲間と分かち合う涙、自宅でひっそり流す涙、涙の種類はいろいろだが、大切なのは悲しみや怒りの涙ではなく、感動の涙に限るということらしい。

(文/三井三奈子、写真/阿部雄介)