「3度目の正直」はなぜできた?
試作機が立て続けに2回も商品化に至らなかったため、「このときは社内の風当たりも強かったし、しばらくはお金も使えなかった」と坂田氏は苦笑いで当時を振り返る。
もちろん開発への歩みを止めていたわけではない。このピンチをチャンスと捉え、「スマートウォッチはどうあるべきか」を最初から見直す時間に当てた。
すでにスマホが普及しており、各人が持つスマホはさまざまな機器やネットワークをつなぐ「ハブ」のような存在になりつつあった。
そこで坂田氏を中心とした商品企画チームは、スマホとの関係性を大事にしつつ、「何のために使うべきか」を再考した。
しかし、「いろいろ考えるのですが、結局行き着くのは『それができればいいけれど、それならスマホでもいいじゃん』というひと言。まるでコンセプトの迷路に迷い込んだ気分でした」(坂田氏)。
堂々巡りの思考の突破口となったのが、「スマホが使いづらいシーンとはどんなときか?」という発想だった。そして行き着いたのが「アウトドア」という使用シーン。カシオは、すでにアウトドアに特化した腕時計やデジカメなどをいくつも作ってきた経験があり、そういった意味でも好都合といえた。
コンセプトの迷路を抜けた開発チームは、3度目の正直とばかりに、2014年からいよいよ試作機3号機、今のWSD-F10の開発に着手した。
WSD-F10がそれまでの2つの試作機と異なるのは、発想アプローチの違いにある。「最初の2つの試作機は、スマホ側からのアプローチでスマートウォッチを目指しましたが、WSD-F10では、腕時計側からアプローチをしたのです」と坂田氏は解説する。
また、伝統と先進の融合という考え方もWSD-F10の開発時の柱のひとつ。「これまでの腕時計としての良さをどこまで搭載できるか。そして、腕時計をどこまでスマートに進化できるか。そういった発想で開発しました」(坂田氏)。
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