試作1号機、その問題点とは?

 WSD-F10の開発の検討を始めたのは今から5年前、2011年の冬。「カシオとして、インターネットとつながる腕時計はどうあるべきか?」をテーマに掲げ、腕時計の進化形となるスマートウォッチの開発に着手した。

 しかし、当時はまだスマートウォッチの概念自体が存在しない時代。どういった製品を作ればいいのか、さまざまな試行錯誤を重ね、ようやく形になったのが2012年末に完成した試作1号機だった。

 試作1号機の特徴を、坂田氏は「形状を含めて、スマホをそのまま小さくしたようなものだった」と説明する。これは、スマホ自体をベースにし、さまざまなことに利用できることを目指して作ったからだ。

 しかしまさにその部分が、商品化にあたっての問題点となった。想定した利用用途が広いゆえに、「何でもできるのはいいが、では何に使うのか」という視点がぼやけてしまったのだ。

「この製品がユーザーにどんな価値を与えられるのか」――明確な製品価値を見つけられなかったカシオは、試作1号機の商品化を断念した。

左が試作1号機、右が試作2号機。電卓付きの腕時計「データバンク」を知る世代には試作1号機のデザインも魅力的に映る
左が試作1号機、右が試作2号機。電卓付きの腕時計「データバンク」を知る世代には試作1号機のデザインも魅力的に映る
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1号機の失敗から、2号機はスポーツ用途に

 試作1号機の失敗を踏まえ、用途を特化するように企画を見直し、2013年秋に完成したのが試作2号機。デザインを一新したほか、スポーツ利用をイメージして衝撃性能や防水性能に優れた機体に仕上げた。

 当時のことを坂田氏は「日本にもダイエットを狙ったジョギングブームの兆しが見えつつあり、ジョギング用のスマホアプリも増えつつあった」と振り返る。そうした背景を踏まえ、ジョギングアプリに対応できる端末を目指して完成させたのが試作2号機だったわけだ。

 各機能の見直しもなされた。例えば「ジョギング中にマイクは不要」ということで、2号機ではマイク機能がすっぱり削除された。

 しかし、この試作2号機も最終的には商品化には至らなかった。

 その理由は2つある。1つは、ランニングに対応したスマホと連携する腕時計「STB-1000」の開発が時計事業部で進んでおり完成度が高かったから。もう1つは、ジョギング用としては、試作2号機がかなりのオーバースペックだったからだ。

 試作2号機はカラー表示に対応し、現在のスマートウォッチのように地図も表示できた。しかし、実際のところ、ランナーが普段走る練習ルートはほぼ決まっている。

「腕時計で地図を表示するよりは、タイムや走行距離を表示するほうがランナーには明らかに重要です。しかし、それならSTB-1000を使うほうが理にかなっていました」(坂田氏)。

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