機能は魅力的だが、価格の高さが気になる

 カシオ計算機がFR100Lで自撮りにフォーカスした背景には、過去の成功体験が見え隠れする。2011年に発売したコンパクトデジカメ「EXILIM EX-TR100」(海外での名称はTRYX)は、可動式のカメラ部やフレーム部を備える独特のデザインにより「三脚がなくてもカメラを固定して撮れる」というコンセプトで売り出した。だが、高倍率ズームデジカメが人気を集めていた当時、TR100はレンズが単焦点だったこともあり、日本では鳴かず飛ばすでヒットしなかった。

カシオ計算機が2011年に発売した「EXILIM EX-TR100」。日本ではサッパリ売れなかったが、海外では自撮りがきれいなカメラとして若い女性の間で爆発的にヒットした
カシオ計算機が2011年に発売した「EXILIM EX-TR100」。日本ではサッパリ売れなかったが、海外では自撮りがきれいなカメラとして若い女性の間で爆発的にヒットした

 だが、台湾や中国のアジア圏では「自分撮りがきれいにできるデジカメ」ということで話題になり、現地では“自撮り用神ツール”という意味を表す「自拍神器」という名称で爆発的にヒット。中国で販売している後継モデルは10万円を超える価格帯にもかかわらず、ブランド品のような感覚で富裕層が好んで買っていくという。

 FR100Lは、他社にはないカメラ部が分離する構造を採用したことで、スマホの自撮りでは難しい「脚長で顔もきれい、風景もこだわって撮れる」という新たな自撮りブームを巻き起こす可能性がある。

 気になるのは価格の高さだ。実売価格は5万円前後で、昨今のコンパクトデジカメとしてはかなり高い水準となる。普通のデジカメを持っていない女性が、自撮りのために5万円も出すかは疑問に感じる。FR100Lは、分離して使えるカメラ部と本体部がセットになっているが、本体部を省いて価格を抑えたモデルを用意してほしかった。本体部は専用アプリを入れたスマホで代用できるので、より大きな画面で操作しやすくなるうえ、何より本体部を持ち歩いたり充電する手間が減らせる。

 今回は既存モデルのハードウエアを流用した製品だが、開発担当者によるとハードウエアを1から起こした新設計のモデルも開発しているという。インスタグラム発で盛り上がりを見せる全身自撮り機能で、スマホにはないコンパクトデジカメの魅力を若年層に訴求できるか注目したい。

(文/磯 修=日経トレンディネット)

日経トレンディネット 2017年2月23日付の記事を転載]