ナイキの最新フォーム素材であるナイキ リアクト フォームをランニングシューズとして初めて採用した「ナイキ エピック リアクト フライニット」が発表された。
ナイキ リアクト フォームはアスリートがフォーム素材に求める機能をすべて満たすべく、3年の年月をかけて開発された。その機能とは、クッション性、エネルギーリターン、軽さ、耐久性の4つ。これらの性質を1つの素材で実現するのは、極めて困難とされている。例えばクッション性を高めようとすると素材は柔らかくなり、エネルギーリターンを求めると硬さが増し、軽さを優先すればある程度耐久性が落ちる、といった具合だ。そこでナイキでは新素材の開発のために社内の科学者や素材エンジニアたちが協力。400以上の組成および処理方法を試し、ナイキ リアクト フォームの組成に至ったそうだ。
「ナイキ エピック リアクト フライニット」(税込み1万6200円)
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一般的なランニングシューズは、フォーム材にEVA(エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂)を採用することが多いのだが、ナイキ リアクト フォームはEVAではなく、100%ナイキの独自開発素材とのこと。ナイキのランニングシューズやトレーニングシューズに多く使われているフォーム材「ナイキ ルナロン」と比較してエネルギーリターンが13%向上したという。
ナイキ リアクト フォームは主流のEVA(エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂)ではなく、100%ナイキの独自開発素材
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ナイキ リアクト フォームは、2017年にバスケットボールシューズに先行して搭載され、ランニングシューズに採用されたのは今作が初。フォームをシューズに組み込む際、長所を最大限に引き出すため、ランナーがどの方向に、どんな力をかけて動くのかというデータをもとに、ナイキ独自のアルゴリズムで計算。最適な素材表面の形状を導き出した。ミッドソールとアウトソールに入れられた波のようなパターンが、それだ。溝の深さは部位によって異なり、溝の深い部分でクッション性を高め、浅い部分で硬さを確保している。
ミッドソールとアウトソールに入れられた波のようなパターンも特徴
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衝撃を吸収しながら足が前に出る“不思議な感覚”
ひと足早く「ナイキ エピック リアクト フライニット」を試した。
まずは足入れ。その場で足踏みしたり、歩いたりした限りではクッション性を強く感じる。筆者が普段履くことが多い「ナイキ エアズーム ペガサス 34」と比べても、かなり軟らかい印象だ。
しかし、走り出すと印象が変わる。着地時にはやはりクッション性を強く感じる。足が軽くミッドソールに沈み、着地の衝撃を緩衝しているのが伝わるのだ。クッション性を重視したシューズの場合、沈みを感じたまま次の動作に進むイメージなのだが、このシューズはそこからポンッと足を押し出してくれる感覚。少々大げさな例えだが、跳び箱の踏み切りに使うロイター板に足を乗せたようなイメージだ。
ミッドソールが単一素材、かつアッパーがサポートパーツの少ないシンプルな作りゆえ、走るまでは安定性に欠けるのではと想像していた。しかし、ソールユニットの幅が広いため接地面積が大きく、足の甲の周り、かかと周辺のフィットが良いせいか、安定性も十分に確保されていた。
ナイキのランニングシューズといえば、2017年の福岡国際マラソンで2時間7分19秒という好タイムを記録して表彰台に上がった大迫傑選手が履いていた“厚底シューズ”「ナイキ ズームヴェイパーフライ 4%」が記憶に新しいだろう。あちらが1秒でもタイムを縮めたいシリアスランナー向けなのに対し、今回のシューズはとにかく楽しく走りたいランナーに適していそうなモデル。衝撃を吸収ながら足が前に出る不思議な感覚は、一度は体験する価値がある。
(文/神津文人)
[日経トレンディネット 2018年2月8日付の記事を転載]
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