日本国内の喫茶店の数は7万軒弱(全日本コーヒー協会、2014年)。「1981年をピークに減少の一途にある」(同協会)というが、それでも約5万5000軒(日本フランチャイズチェーン協会、2017年12月時点)のコンビニエンスストアよりはるかに多く、喫茶店やカフェを訪れる人が多いことがうかがえる。そんななか、既存のカフェの形にとらわれない“変わり種”カフェが続々と登場している。
夕方以降にオープンする飲食店の営業前の時間を有効活用し、スペシャリティコーヒーを低価格で提供するカフェ「スペイシーコーヒー」が2017年12月に都内主要駅周辺に6店舗同時オープン。また、月額定額制でコーヒーを提供する「coffee mafia(コーヒーマフィア)が2016年10月に西新宿に、2018年1月には飯田橋にも開業した(日経トレンディネット関連記事「コーヒー マフィアが提供する “次世代天ぷら”とは?」)。2018年2月に渋谷にオープンした「変なカフェ」では、人ではなくロボットがコーヒーを入れてくれるという(日経トレンディネット関連記事「変なカフェ ロボットが入れる本格コーヒーにうなる」)。
客がカフェに求めるのは「空間と電源とWi-Fi」
スペイシーコーヒーは、新宿駅、渋谷駅、新橋駅という主要な駅からそれぞれ徒歩1~5分ほどのエリアにある飲食店を“間借り”して営業している。何かあったときのためにスタッフが1人常駐するが、基本的に接客は行わず、客が店内のマシンを使って自分でコーヒーを入れるシステムだ。会員登録すればコーヒーが税込み50円(以下、価格は全て税込み)で購入でき、最大1時間の利用が可能(会員登録しない場合は1杯100円)。入退室は入口に設置されたタブレット型端末にスマートフォンの2次元コードをかざすか、顔認証システムを利用して管理しているという。
運営するのは都内で約3300室の貸し会議室を展開するスペイシー(東京都中央区)。同社の内田圭祐社長は「外出先で仕事や打ち合わせをしたくても、ターミナル駅付近の喫茶店やカフェは混雑して入れないことが多い。その一方で、同じエリアにある居酒屋やバーは日中営業していないため、スペースを借りることを思いついた」と説明する。
50円という価格の理由は人件費がほとんどかかっていないからだという。同店は全店Wi-Fi、電源完備をうたっているが、店内にあるコンセントに延長コードをつなぎ、自席に持ってきて使う仕組みだ。セッティングも客自ら行わなくてはならない。「客がカフェに求めるのは空間と電源とWi-Fi。サービスやコーヒーは『あったほうがいい』という程度では」(内田社長)。
現時点では収益よりも本業の貸し会議室の認知度を上げるために行っているというが、「ある程度の型(かた)ができたら、一気に店舗数を増やしていきたい」と内田社長は話す。1年後には店舗を50カ所に広げ、年間50万人の利用を目指すという。
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