VRとは真逆 人と人をダイレクトにつないでいく

 このように、Nintendo Switchには、「コントローラの存在すら、忘れてしまおう」「楽しいのなら、いっそゲーム画面すら見なくてもいいよね」と提案するゲームが用意されています。それらに子どもたちが夢中になっていた体験会の光景は、きわめて衝撃的なものでした。

 なぜなら、それはゲームの常識をひっくり返す光景だからです。ゲームの歴史は、いかにプレーヤーに没入してもらえるか? そのためには画面の中に広がる世界をどうやって魅力的にするか? を考え続けてきました。その究極形が、ゲーム世界の中に飛び込んだかのような体験をプレーヤーに提供するVR(仮想現実)です。

 Nintendo Switchはその真逆です。ゲーム世界を魅力的にするのもいいけど、ゲーム画面の前――つまりプレーヤーがいる世界を、魅力的で楽しい空間にするのも素敵だよね! と提案し、子どもたちの心をつかんでいたのです。それはスマートフォン向けゲームアプリ『ポケモンGO』が、私たちがいる世界そのものを楽しい空間にして、多くの人を夢中にさせたことと、方向性は同じかもしれません。

 さて、Nintendo Switchは、従来のようにテレビの大画面を使って遊ぶのみならず、マシン本体(これも軽い! およそ300g)に液晶画面がついているため、外出先に持ち出してテーブルに置いて遊ぶことが可能。さらに、本体にジョイコンを装着すると、そのまま携帯ゲーム機のように手に持って遊ぶこともできます。

背面のスタンドを引き出してテーブルなどに本体を立て、ジョイコンを使って遊べる(撮影:磯修)
本体にジョイコンを装着し、携帯ゲーム機のようにプレーすることもできる(撮影:磯修)

 このように、自宅のみならず、あらゆる場所に設置できるゲーム機を用意し、同時にゲーム機のある場所そのものを「楽しい空間にしてしまうソフト」を用意してきたことの意味は、とてつもなく大きいと言っていい。Nintendo Switchが普及したならば、それはあらゆる場所に持ち運ばれ、そこが楽しい空間になり、そこには体験会にいた子どもたちのような笑顔が広がっていくことになるからです。ほんと、なんとも興味深いゲーム機が登場したものです。

(文/野安ゆきお)

日経トレンディネット 2017年1月19日付の記事を転載]