軟らかすぎると老後に関節が不安定になる?

 過剰な柔軟性によって、老後に関節が不安定になるリスクもあります。

 靭帯が骨と骨をつないでいるという話を先ほどしましたが、筋肉はそれらを覆うサポーターのような役割をしています。筋肉は筋線維という線維状の細胞の集合体で、これを筋膜が覆っています。筋線維は無数の筋原線維で構成され、筋原線維はサルコメア(筋節)からできています。ストレッチを定期的かつ継続的に行うとサルコメアの数が増えると考えられていて、増加したぶんだけ筋原線維が長くなり、柔軟性が高まるのです。サポーターが少し弛むぶん、可動域が広がるというイメージですね。

 筋肉量が多くてサポーターが厚いうちはいいのですが、老化とともに筋肉量が減ってサポーターが薄くなると、関節が不安定になってしまいます。それが股関節であれば、脚に力が入れにくく、歩きづらくなってしまうでしょう。

 特殊なスポーツをしている人以外には180度開脚は必要ありませんが、適度な柔軟性は必要です。体全体をバランス良くストレッチしていただきたいですが、特に念入りに行ってほしい部位を挙げるとするなら「腸腰筋」です。

 腸腰筋とは骨盤と大腿骨、腰椎を結ぶ筋肉群で、歩くときなどに脚を持ち上げる動作で働く場所です。加齢とともに硬くなりやすいとされていて、腸腰筋が硬くなると骨盤が前傾して前かがみになり、いわゆる“老化姿勢”になってしまいます。

 どの部位が硬いのか、硬くなりやすいのかというのは、個人差があります。お勧めしたいのは、一度専門家にストレッチをしてもらうこと。スポーツジムでパーソナルトレーナーに見てもらうのもいいでしょうし、近年増えているストレッチサロンでもいいでしょう。自分のどの部位が硬く、どこが柔らかいのかが分かれば、より効率的に柔軟な体になれるはずです。

 ストレッチ関連の書籍を購入する場合は、1カ所の部位に対していくつかのポーズが載っているものがおすすめです。同じ筋肉をストレッチする場合でも、体格などによって“伸びる”と感じるポーズが違うからです。

中野ジェームズ修一
フィジカルトレーナー/米国スポーツ医学会認定運動生理学士

卓球の福原愛選手など日本のトップアスリートだけでなく、高齢の方の運動指導も行う「パーソナルトレーナー」として活躍。日本各地での講演も精力的に行っている。近著に「なぜいくら腹筋をしても腹が凹まないのか」(幻冬舎新書)など多数。

日経トレンディネット 2017年1月18日付の記事を転載]

(構成/神津文人)