香りが拡散しない秘密は?

 開発が最も大変だったのは香りをカートリッジに詰める方法だったと藤田氏は言う。香りは揮発分子なので、拡散しないようにせめて1カ月は保持しながら、取り出し自由にしなければならない。また、香りを自由にするツールだから、取り扱いやカートリッジの交換などは簡単でなければならない。

カートリッジは、こんなに小さい。

 ワンタッチで交換可能なカートリッジは、中が小さな部屋に分かれていて、そこにそれぞれの香りを封じ込めているのだが、「部屋が小さすぎると空気が通らなくなって、香りを噴出できなくなるし、大きすぎると香りが保持できない。それが両立できる構造を考えたが、射出成型では作れなくて量産が難しかった。そこに、ちょうど、社内では開発段階だったマイクロ光造形の3Dプリンタがあり、これなら作れそうというので、そちらの開発を進めて、量産機を作った」と藤田氏。発売までのスケジュールはあまりにも無茶で、周りからはクレイジーと言われていたという。

カートリッジをアロマスティック本体に挿し込めば準備完了。
外すときは、上部を押すだけ。このように上部が飛び出すので、これをつまんで引っ張り出す。

 香りがなぜ、スイッチを入れたときはしっかり香るのに、拡散せずに消えるのか。「香りは最初のインパクトがあればかなり感じられるものなので、後は一気に希釈させるようにした」と藤田氏。実は、アロマスティックが一度に噴射する香りはかなり少量。小さなカートリッジに5種類もの香りを閉じ込めて、約1カ月も持つ秘密は、そういうところにもある。

 実際は、スイッチを押している間、噴出されるので、好みで量を自分で調整すればよいのだが、筆者が使っている限りでは、本当に、シャッと1~2秒くらいスイッチを押すだけで、ムードを変えるのには十分だ。また、部屋の中などでたっぷりと香りに浸りたいなら、裏技モードがある。スイッチのダブルクリックで、香りが30秒間噴出され続けるのだ。

手前のボタンを押すと、上部の穴から香りが噴出する。
上部を回転させて香りを選択すると、香りの模様が表示される。

 香りを好きなときに味わって気分を変えるという新しい習慣は、アロマスティックを使っていると、簡単に身に付いてしまう。家でリラックスして、というより、考えごとをしながら歩いていて、ちょっと気分を変えたいとき、家を出るとき、寝る直前、嫌いな匂いを嗅いでしまったときや商談の直前などで使うと気が引き締まったり、ラクになったりするのだ。音楽もいいけれど、“一瞬”で気分が変わる劇的な面白さは、アロマスティックで初めて体験した。

(文・写真/納富廉邦)

日経トレンディネット 2017年1月5日付の記事を転載]