香りのエンターテインメント化を実現

 アロマスティックは、ソニーの新規事業創出プログラム「Seed Acceleration Program(SAP)」のひとつとして誕生した。このSAPに応募し、アロマスティックを開発することになったきっかけについて藤田氏は、「ソニー先端マテリアル研究所にいるときに、業務外活動として、3Dコンテンツをより没入感を持って見せる要素の一つとして、嗅覚に訴えることを考えていた。香りなら空気感が伝えられるし、雨が降ったあとの香りを感じたときのハッとする感覚をエンターテインメントの中に取り込みたかった」と語った。

アロマスティックを開発した、ソニー新規事業創出部OE事業室の藤田修二氏。

 この段階で、香りを楽しむために使うというアイデアの根本はでき上がっていたのだが、「コンテンツの中で使うのはハードルが高く、世の中に出すのにも時間がかかる」と、別の道を考えつつ、藤田氏は社内留学制度で渡米。一時期、香りの問題は棚上げになる。そして、留学から帰国すると、ソニーの中にSAPが立ち上がっていた。既存の事業領域にあてはまらない新規事業アイデアを提案でき、ソニーグループ社員であれば誰でも手を挙げられ、オーディション審査を通れば事業化にチャレンジできるというシステムは、藤田氏にとても魅力的に映ったという。

 「研究者だったので、一度、製品開発をしてみたかった」と藤田氏。そこで、留学前に考えた香りのエンターテインメントについてアイデアを詰め始める。

 「アロマは、それ自体完成されたコンテンツで、それだけで十分に楽しめる。図書館に行って1日中考えていたが、部屋の中で香りは楽しめるけれど、消したり切り替えたりはできないとか、いつでもその香りが嗅ぎたいわけではないとか、そのときどきで香りを楽しめれば、ムードを変える製品ができるのではないかと考え、1日でコンセプトを書き上げた」(藤田氏)

 藤田氏が1日で書き上げた企画がSAPオーディションを通り、製品化することになった。この時点で、現在の「アロマスティック」の原型は出来上がっていたが、人間の嗅覚に訴えることは簡単にはできない。それを成功させてしまったのは、藤田氏が分子生物学の博士で、化学と生物学に精通していたからだった。