「これはスポーツだ」という愚直なアピールこそが必要
以上、基本的なことだけを説明したが、日本でのeスポーツの発展を阻む最大の壁の1つが風営法だという理由が、ご理解いただけただろうか。
近年、ようやく日本でも賞金付きのeスポーツ大会の開催が決定されるまでになったが、これは、あくまでもeスポーツ発展のための第一歩を踏み出したにすぎない。景品表示法や刑法の賭博罪というハードルをクリアし、ようやく賞金付きの大会の開催にこぎつけただけ、という段階なのだ。
風営法によって、一般ゲームファンが腕を競い合う在野の大会は、いまなお全く開催できない状態だ。誰もがテレビゲームをスポーツとして楽しむという文化は、全く存在しないのだ。そんな中でプロゲーマーによる高額賞金の大会を開催するというのは、現状に風穴を開けるという意味では大きな一歩である。だが、野球に置き換えれば、少年野球やアマチュア大会が法律で禁じられた状況下で、プロ野球の興行だけをスタートするようなもの。まだまだ健全な状況とはいえない。
eスポーツを日本に普及させるためには、テレビゲームをスポーツとして世間に認知してもらい、大小さまざまなゲーム大会が合法的に行えるような環境作りが大事だろう。在野のゲーム大会から誕生した凄腕ゲーマーを、人々が応援し、尊敬するような気運が生まれてはじめて、文化として根付く。そのためにも、風営法をクリアするための道筋を探ることが、なによりも重要になってくるだろう。
そうした道がないわけではない。ヒントはビリヤードだ。実は、昭和29年(1954年)の風営法改訂では、それまで風営法で管理されていたビリヤード場が健全なスポーツを行う場として認められ、風営法の範囲から外されている。健全なスポーツであると社会的に広く認められれば法律の範囲外になるという実例があるのだ。
今後はゲーム産業全体で、eスポーツは新しい形のスポーツなのだ! 健全なスポーツなのだ! と愚直なまでに強調し、世間に認めてもらうための努力を続けなければならないだろう。
(文/野安ゆきお)
[日経トレンディネット 2017年12月28日付の記事を転載]
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