年初だからこそ考えたい、「家計のために今やるべきこと」は?
日々家計の相談を受けるファイナンシャルプランナー(FP)の山田英次氏が教えます。
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意外に思われるかもしれませんが、年末年始はご夫妻、またはご家族での相談予約が多く入る時期。相談の目的としては「この1年を総括したい」「来年のプランを策定したい」などのリクエストが多くなります。この時期に予約が増えるのは、普段忙しく過ごされていると、家族皆で落ち着いて『お金について』話をする時間がなかなか確保できないからかもしれません。
さて、そんなみなさまのお話を伺っていると、家計管理における下記のような悩みや思いが、ダイエットと共通しているように感じます。
「今年も思うような成果が出なかった」
「来年こそはしっかりやっていきたい」
「今までの自分を変えたい」
もしかしたら、みなさんの中にも上記のような悩みを抱いている方がいらっしゃるかもしれませんね。
良い結果を出すための“3つのポイント”
家計管理と健康管理、どちらも大切なことだと思いますが、実は、双方で共通する、良い結果を導き出すために必要なことが3つあります。今回は、まず、その3つのポイントについて、お話をしたいと思います。
【ポイント1】中長期的視野をもつ
言い換えれば、1年後、3年後、5年後の目指すべき状態をイメージするということです。
例えば、家計管理においては、1年でどれくらいためたいのか、5年後にどれくらいの資産を持っていたいのか、など、具体的に考えることが大切です。
【ポイント2】適切な計画を立てる
ひたすら食べるのを我慢すれば一時的に体重は落ちますが、いずれリバウンドや体調不良などのネガティブな影響が出てきてしまうことになります。
家計管理においても同様です。ひたすら支出を抑えれば、お金はたまります。お金はたまりますが、無理なペースで自分や家族の支出を抑制しても、継続できなければ意味がありません。自分や家族のストレスがたまり、そして、結果、挫折する悲しみを味わうことになるかもしれません。
【ポイント3】自分の立ち位置を確認する
これは、ポイント(1)の「中長期的視野」やポイント(2)の「適切な計画」があってこそのポイントとなりますが、目標を達成するためのプロセスを楽しむ工夫をするということです。
例えば、皆さんが山登りをすることを想像してみてください。
足元ばかりを見て坂道をひたすら歩いているだけでは苦痛かもしれませんが、顔を上げて景色を楽しんだり、自分たちがたどってきた道を振り返って登ってきた高さを感じることができたりしたときは、喜びや楽しみを感じることができるかと思います。
家計管理のプロセスも同様です。ひたすら貯蓄や節約の作業に没頭するのではなく、たまには、たどりつくべき目標に、順調に近づいていることを確認してみてください。
今やるべきことは「明確な目標設定」
本題についてお話を進めていきます。
「これから1年の家計のために今やるべきこと」とは、先ほどの3つのポイントのうち1と2を具体化することといえます。
ゴール(頂上)のない登山を頑張り続けることができる人はいないと思います。貯蓄や節約は大切かもしれませんが、やれるだけ頑張ろうとせずに、どれくらい頑張ればよいか、明確な目標を持ってからスタートするべきなのです。
家計管理においては、これからのみなさんの人生における『未来の出費』を具体的にイメージして(=ポイント1)、そして、それに対する適切な貯蓄ペースを策定する(=ポイント2)ことが大切なのです。
では、目指すべき山の高さともいえる未来の出費は、どのように考えればよいのでしょうか?
日常の収入の範囲で賄うことができるものは、事前に準備する必要はありません。具体的には、食費や光熱費、通信費や遊興費などです。月々の家計簿が赤字にならない範囲で、上手にバランスをとってください。これは、目指すべき山ではなく、足元の石ころです。
準備が必要な未来の出費とは、ずばり、人生の3大出費ともいわれる「住宅」「教育」「老後」にかかわるものです。これらはどれも、事前に、しかも数年、場合によっては10年、20年の準備期間が必要になることもある大型出費なのです。
ここでは具体例として、長生きすれば誰にとっても必要な資金となる「老後資金」について考えてみたいと思います。
例えば、現在、毎月20万円で生活している30歳自営業のAさん夫妻がいたとします。年間で必要となる生活費は、240万円(=20万円×12カ月)です。ところが、調べたところ、20歳から60歳まで国民年金を払ったとしても、自分たち夫婦が65歳からもらえる年金は、夫婦合算で年間150万円前後であることに気づきました。
ここで、65歳以降仕事をしなければ、単純計算で毎年90万円(=240万円-150万円)を預貯金から取り崩していかなければならないことが判明します。今回は、老後に多少の医療費など雑費がかかる可能性を踏まえ、年間100万円程度の取り崩しがあるものとして考えましょう。
仮に65歳から85歳までの20年間、この金額を取り崩すと、2000万円(=100万円×20年)が消えていきます。これが、“目指すべき山の高さ”です。現在30歳のAさん夫妻が65歳まで仕事をした場合、準備可能期間は35年ということになりますから、結果として、毎年約60万円(=2000万円÷35年)の貯金を老後のためだけに継続することが必要だということになります。
Aさんご夫妻にとって、老後という山の高さは2000万円で、その山を35年で登りきるための適切な貯蓄ペースは毎年おおよそ60万円、月々5万円の貯蓄ペースだということです。
みなさんもぜひ、自分が登るべき山(「住宅」「教育」「老後」など)の高さを見定め、適切な計画を立ててみてください。
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中長期的視野で計画を立てる最大のメリットは?
これはもう、「安心してお金が使える」のひと言に尽きます。明確に意識していない人も多いのですが、多くの方は、未来のお金に対して、決して消えることのない、ぼんやりとした不安を感じています。
だからこそ、お金を使うことに罪悪感や不安感を抱くのです。その結果、あらゆる場面で支出を抑制、節約するなどして“いつもガマン”する人が増えてきているのです。これは、とてももったいないことです。
人生は一度きりですし、時を戻すことはできません。未来が不安だからといって、みなさんがガマンにガマンを重ねる人生を過ごした場合、あとで自分の人生を振り返ったとき、少し寂しい気持ちを感じるかもしれません。
もちろん、今を楽しむためだけに無計画に浪費してはいけませんが、未来の登るべき山(出費)を見定め、しっかりとした貯蓄計画を立ててしまえば、それ以外のお金は今の自分と家族のために使ってもよいのではないかと思います。
2018年はぜひ、未来のために必要なお金と今使えるお金を切り分け、家計管理をしてみてください。服やバッグを買っても、旅行しても、外食を楽しんでも、きっと安心してお金が使える気持ちになっている自分に気づくはずです。
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(文/山田英次)
[日経トレンディネット 2018年1月4日付の記事を転載]
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