冒頭の姉妹の里親となっているキャリー・ソトメイヤーもアルミ工場の閉鎖を理由に挙げる。

 「オピオイド鎮痛剤の乱用は、失業も理由だと思います。このコミュニティは長い間、アルミ工場に依存してきました。私の祖父も30年、40年と働いていました。高校性の時に、『何でこんな勉強が必要なんだ。どうせあそこ(の工場)で働くのに』と言った友人がいました。それだけ大きな存在だったということです」

労働者を成長産業に移転させる困難

 アルミ工場が閉鎖された時には一時金が出たが、そのカネで新しいスキルを身につけようと考えた労働者は聞いたことがないとソトメイヤーは言う。

 「その日暮らしなんですよ。あるいは、年を取り過ぎていると感じたのかもしれません。自分はだいぶ年を取っていて家族もいる。何をしたらいいのか分からないのに、カレッジに行くなんて現実的に思えないんです」

 非効率な産業から新たな産業に労働力を移転させることが必要だと専門家は語る。だが、年を取れば取るほど、そのハードルは上がる。

 アルミ工場を所有するセンチュリー・アルミニウムに閉鎖の理由を尋ねたところ、「閉鎖したのは高い電力価格のため。その問題が解消されれば再開したいと思っている」と担当者は答えた。

石炭産業に打撃を与えた天然ガス

 石炭産業が主体の南部や南西部も、産業衰退によって雇用が壊滅的な打撃を受けた。製造工程の自動化や熾烈な国際競争で雇用を減らした製造業とは異なり、石炭産業に打撃を与えているのは米国産の安価な天然ガスである。

安価な天然ガスの影響で石炭火力発電所の廃止が相次いだ。

 米国の東北部やテキサス州などに広がっているシェール層。2000年代後半以降、このシェール層からガスやオイルを採取するフラッキング技術が飛躍的に進歩したため、米国で天然ガスの価格が大きく下がり始めた。いわゆるシェール革命である。

 ウェストバージニア産の石炭は国内の火力発電所用の燃料として重宝されてきたが、より環境に負荷の少ない天然ガスの価格が下がれば勝ち目はない。こうして、石炭火力から天然ガスにエネルギーが置き換わる動きが加速した。