コテージビル小学校には「メンター・プログラム」という取り組みもある。近隣で働く大人が昼休みに問題を抱える子供と一緒に過ごすというプログラムだ。親が刑務所にいたり、薬物中毒だったりする子供は、大人と適切な関係を築くことが難しい。そこで2年間、そんな子供たちと校庭で遊んだり、昼食を取ったりしてコミュニケーションを深める。

注射針を差し込む瞬間を目の当たりにする子供
取材当日も、祖父に育てられている男の子のところに、近隣のプラスチック工場で働くデイビッド・ウィリスが来ていた。バスケットボールで汗を流した後、パソコンルームで一緒にゲームをして過ごしていた。
「私が子供の頃はいい大人や教師が周囲にいて人格形成の機会を子供たちに与えていました。コミュニティがみんなで子供たちをサポートしていたんです。私も子供たちの人格形成の手伝いをしたいと思って参加しています。大変なこと? 何もありませんよ」
そう語ると、メンターのウィリスは男の子の待つランチルームに向かった。カウンセラーとしてメンター・プログラムを導入したロビン・コービンによれば、メンターは13人いるが、全員がボランティアで参加している。
「コテージビルの子供たちは、身近な人の中にドラッグを使用している人がいることを知っています。中には、親が注射針を打つ瞬間を目撃した子もいる。そんな子供たちの心の状況を改善する上で、メンターは極めて重要な役割を果たしている。子供たちは毎日、メンターが来るのを楽しみに待っています」
炭鉱とドラッグ
ドラッグ・エピデミックはウェストバージニア州全体で起きているが、石炭産業が雇用の大半を占めている南部や南西部はとりわけ悲惨な状況だ。鎮痛剤が原因の死亡率は州平均で29.6人(人口0万人当たり)だが、ケンタッキー州との州境となる南部の郡に限れば倍近くに跳ね上がる。
ウェストバージニア州で鎮痛剤が広がった発端は、厳しい炭鉱労働にあると言われている。
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