伝統的な教会が信者を減らす中でメガチャーチが拡大しているのはなぜか。一つの要因は人口動態の変化だ。

 1960年代以降、南部で工業化が進展し、中西部や北部から大量の労働者が流れ込んだ。それに伴って郊外に住宅が広がっていく。その過程で、一部の教会が駐車場完備の大規模施設を建設、故郷の教会から切り離された人々を取り込んでいった。街の商店街が廃れる中で郊外型モールが急成長したのと同じ構図だ。

メガチャーチの主な“企業努力”

 もちろん、メガチャーチの“企業努力”もある。

 週末に働く人のために、日曜の複数回の礼拝や土日・平日の礼拝を可能にしているメガチャーチは少なくない。子連れの信者のために託児所を置くのも当たり前だ。移民向けの英会話サービスや医療サービス、米国在住に必要なビザ取得のための法律相談を無償で提供しているところもある。プライマリケアだとしても、米国で無料の医療サービスは移民にとってとてつもなく大きい。

 テクノロジーの活用も積極的だ。ヒューストン・ファースト・バプティスト教会はクラスごとにフェイスブックやインスタグラムのグループがある。マットのスピーチもストリーミング動画としてすぐにホームページやフェイスブックにアップされていく。やっていることは普通の企業と変わらない。

 メガチャーチが信仰よりも、貧困者支援やコミュニティとしての側面を強く打ち出しているという側面もある。

毎週日曜には7000~8000人が訪れる(写真:Retsu Motoyoshi)

ヘロイン中毒者が感じた神の声

 オハイオ州コロンバスのメガチャーチ、ビンヤード・コロンバス教会は移民向けの英会話サービスや医療サービスに加えて、薬物中毒者向けの構成プログラムを提供している。製造業が衰退したオハイオ州はオピオイド(鎮痛剤)の乱用などドラッグ中毒が急増している。コミュニティの危機に対する教会としての対応だ。

 プログラムのリーダーを務めるブレット・ギャノンも元はドラッグ中毒だった。

 コロンバスに生まれ育ったギャノンとドラッグの関わりは長い。母親のアル中をきっかけに7歳の時にマリファナを吸い始め、12歳でマリファナやコカインの売人になった。彼自身はコカインに手を出していなかったが、友人の自殺にショックを受けて17歳でコカインを始め、すぐにヘロインにハマっていった。

 「それから2~3年間はほぼ毎日ヘロインを使っていた」

 途中、ヘロインをやめようと思ったことは何度もあった。大麻の栽培で刑務所に送られた時は「これでやめられる」と思ったが、それでもヘロインをやめることができなかった。そんなある日、アル中を克服した母親にどうやってやめたのかと尋ねた。すると、「ジーザスが効く」という。神に祈り、神を感じ、神と語り合うことでアルコールを欲しなくなったのだ、と。

 神の存在を大して信じていない私(篠原)によく分からない世界だが、彼の話によると、母親と聖書を読み、神の言葉を繰り返したことで、結果的にギャノンはヘロイン中毒を克服した。

 「キリストは私の中から欲望を取り去ってくれた」

 そのまま中毒死する人間も多い中でギャノンが社会復帰できたということは、プロセスはともかく確かにキリストが「効いた」のだろう。現在、ギャノンはリカバリープログラムのリーダーとして、自身の体験を中毒に苦しむ人々にシェアしている。