それでは、現実論として銃乱射という問題にどう対処するべきなのだろうか。

 銃規制推進派は厳格なバックグラウンドチェックを求めている。フロリダの銃乱射では19歳の元生徒がAR-15を購入して凶行に及んだ。ビールも買えない若者が半自動小銃を買える現状を考えれば、厳格なバックグランドチェックや年齢制限は当然だろう。米国ではウォルマートやスポーツショップで気軽に銃を買うことができるからなおさらだ。

 「銃を持つ権利と規制の両方があるべきだと思っている。既に出回っている銃はなくならないし根絶できない。でも、犯罪者や精神を患っている人間の手に届かないようにすることはできるはず」

 そうUCLAのウィンカーは言う。

社会的弱者こそ銃を持つべき

 一方で、銃規制反対派は全く逆のことを述べる。

 「オープンキャリーを認めるべきだと思うのは、こちらが武装しているということを視覚的に伝えることができるため。これは犯罪者に対する抑止力になる」

 ミシガン州デトロイトで銃訓練学校を経営しているリック・エクターは全米でオープンキャリーを認めさせる運動を展開している。オープンキャリーとは銃を見える状態で携帯するスタイルのことで、州によっては規制の対象だ。「銃を持っている人間には攻撃してこない」という理屈は極端にも聞こえるが、女性や高齢者など弱者こそ銃を持つべきという主張は根強い。

 銃乱射の悲劇をなくすにはどうすればいいのか。銃規制反対派が声高に主張するのは、一般人の銃の携帯を禁止するガン・フリー・ゾーン(Gun Free Zone)の撤廃だ。

 米国は学校など公共の場所をガン・フリー・ゾーンに設定している。銃器を持ち込めば処罰の対象になる。公共の場に銃の持ち込みを禁ずるべきだというのは当然のことのように思えるが、銃乱射を目論む人間にとって、ガン・フリー・ゾーンは武装している人間がいないということを意味する。つまり、安心して目的を達せられるということだ。

強盗に銃で襲われたことをきっかけにエクターは銃を持つようになった(写真:Retsu Motoyoshi)

小学校も武装化すべきか?

 「1950年以降に起きた銃乱射事件の98%はガン・フリー・ゾーンで起きている。2012年に起きたコロラド州オーロラの映画館で起きた銃乱射事件での場合、犯人は当初、コロラド国際空港をターゲットにしていた。だが、下見の段階で武装したセキュリティがいるのを見て、映画館にターゲットを変更した。銃乱射をしようと思う人間はクレイジーだがバカではない。乱射による被害をなくすのであれば、ガン・フリー・ゾーンをやめるべきだ」

 銃規制反対派の論客として知られるジョン・ロットはこう指摘する。私(篠原)の子供は地元の公立小学校に通っている。私自身、銃規制は推進すべきという立場だが、親として銃乱射犯に対して、丸腰の児童が逃げる以外に学校側の自衛手段がないという状況には不安と疑問もある。

 ロットは経済学者としてスタンフォード大やシカゴ大、イエール大など名門大学で教鞭に立った。シカゴ大では、銃規制を進めようとしたオバマの同僚だったという。もともとは銃規制推進派だったが、犯罪と銃の関係を調べるうちに銃規制の論拠が誤っていると考えるようになり、銃規制反対派に転向した。それ以来、銃規制を巡る議論から抜け出せなくなった。

 バックグラウンドチェックに関しても、現状のままでは強化しても無意味だと語る。

 「バックグラウンドチェックで銃の購入が止められた人がいるのは事実だが、その大半はミスによるものだ。全米即時犯罪紹介システム(NICS)は名前の発音で機能しており、ある犯罪者が銃の購入を禁止されると、同じような名前の人もブロックされてしまう。スミスという名前は一般的だが、Smithもあれば、Smytheもある。政府にとっては同じ名前だ。こんなのは簡単に修正できるのに、政府は何もしない」

 トランプ政権はフロリダの事件後、教師の武装化について言及した。リベラルは一斉に反発したが、ガン・フリー・ゾーンを巡る前述したような状況が背景にある。

 既に大量の銃が出回っていることを前提に議論する銃規制反対派と、「銃のない世界」という究極を目指す規制推進派。現実と理想の断絶は深い。

「ガン・フリー・ゾーンの撤廃こそ乱射を防ぐ」とロットは語る(写真:Retsu Motoyoshi)