働くことを止めた時から“老後”が始まる

 唐突にそんなことを言われてもきっと戸惑うことでしょう。「老後をなくす」って一体どういう意味なんだ、と思われる方も多いと思います。私が自分なりに定義している「老後」は単純な年齢ではありません。働くことを止めた時から老後が始まると考えているのです。つまり「老後をなくす」というのはできる限り働き続けるということです。

 

 実際、働き続けることで俗に言う「老後の三大不安」はかなりの部分で解消されます。まずお金ですが、働き続ければいくばくかのお金は入ってきます。年金だけで生活するよりは豊かな暮らしができるでしょう。健康面を考えても何もせずにじっと家に閉じこもっているよりは、外に出て活動しているほうがはるかに健康にも良いし、体調管理もしやすくなります。孤独ということを考えると、働くことによって程度の差こそあれ人と接する機会は多くなりますし、社会と関わり続けるわけですから、そうそう孤独に陥ることもありません。このように、働くことで老後の問題の多くが解決されるのです。

 ところが“働き続ける”とか“生涯現役で頑張る”というと、「何で60歳を過ぎてまで働かなきゃいけないんだ。いい加減早く引退したいよ」と言う人は多いでしょう。なかには頑張って働いて投資で資産を作り、アーリーリタイアメントを目指しているという人もいます。人それぞれですからどういうやり方が一番良いということは言えませんが、「齢をとって働くのはまっぴらごめん」という方は、どうもサラリーマンの時の働き方をイメージされているのではないかと思うのです。私も定年までずっとサラリーマンをやってきましたから、あんな仕事をこれからもずっとやらなきゃいけないかと思うとうんざりします。

 サラリーマンというのは自分がやりたいことが自由にできるわけではありません。時に自分の意にそぐわないこともやらざるを得ません。でもそれは当たり前の話です。組織に所属して働くわけですから、組織の意思が優先されるのは当然で、各自が自分のやりたいことをバラバラにやっていたのでは組織は機能しません。自分の意思を殺して組織の方針通りに動かなければならないというのは時に大きなストレスを感じるものです。結果として働くこと=苦役と感じるのはごく普通のことです。

 会社を定年で辞めた後は、そういう働き方を見直し、自分の好きなことを仕事にすれば良いのです。若い頃と違い、いくばくかの蓄えもあるでしょうし、公的年金も65歳からは出ます。おまけに退職金もあるとすれば、たちまち生活できなくなるということはありません。

 前のコラムにも書きましたが月に3万円とか5万円程度のお小遣い稼ぎという程度の収入でも十分なのです。サラリーマン時代のようなストレスにまみれた仕事とは離れ、自分がやりたいこと、やりたかったことを妥協せずにやれば良いと思います。私も60歳で会社を辞めた後、自分のやりたい仕事にこだわったので最初の1年ぐらいは何も仕事がありませんでしたが、それほど深刻には考えませんでした。今は有償無償を問わず、様々な仕事やイベントがあるため、全く仕事をしない休みの日は年間3~4日ぐらいしかありませんが、サラリーマン時代とは違って全く苦になりません。

 だからと言って全く無理はしていません。睡眠時間だって一日8時間はたっぷりとっています。何よりもサラリーマン時代との最大の違いは全ての仕事の時間を自分のために使えるということです。会議もなければ上司への説明も不要、部下の指導や評価といった“ねばならない”仕事がない、これが会社を辞めた後、マイペースで働くということの大きなメリットだろうと思います。

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