「定年起業」で起きる2つの“勘違い”に注意!
再雇用が一般的になりつつある一方で、まだまだ数は少ないものの定年後のシニア起業も増えつつあります。私はシニア起業というのは、大いにやるべきだと考えています。なぜなら若い頃の起業とは異なり、年金や退職金などで当面の生活資金がある程度確保されている場合が多いからです。したがって、あまり難しく考えず、過大な目標を持たず、せいぜい最初は月に数万円のお小遣い程度の収入が稼げるぐらいを目標にしてやればいいと思います。
ただ、定年後に起業するにあたって、多くの人が勘違いしがちなことがあります。起業してもうまくいかないという人は数多くいますが、色々話を聞いてみるといくつもの勘違いをしていることが分かります。その代表的な勘違いについてお話したいと思います。
まず大きな勘違いの1つ目は「資格」です。定年後に何か資格を取ろうという人は多いようです。特に専門的な技術や知識を持っているわけではない、営業や事務職だった方に人気があるのが「ファイナンシャル・プランナー」(FP)とか「社会保険労務士」といった資格です。実際に年配の方でFPの資格を持っておられる方はとても勉強熱心です。
ただ、こうした方々の中には、「資格」を取れば仕事になる、と思っておられる方がいますが、それは大きな勘違いです。いくら資格を取っても顧客がいなければ仕事はありません。資格を取りさえすれば何とかなるというのは大きな幻想です。
大切なのは営業であり、どうやって顧客を作るかということです。FP資格を取ることによって、自分自身の勉強にしようと思うのであればそれはおおいに結構なことですが、この資格を取ったから仕事になるということは考えないほうがいいでしょう。
ではどうやって顧客を作ればいいのでしょうか?ここに2つめの大きな勘違いが存在します。それは「人脈作り」です。
起業する上で人脈が重要だというのはその通りです。しかしながら人脈を作ろうとして、いわゆる「ビジネス交流会」のようなものにせっせと出かけていくのは間違いです。人脈というのは単に知り合いとか名刺の数を言うのではありません。あなたの能力をちゃんと理解してくれている人が人脈なのです。そのためにはまずあなた自身が相手に何かをやってあげることが大切です。それによってあなたの能力を理解してもらい、少しずつ仕事が来るようになるのです。
そしてそこからが相手とは対等なビジネスとしてギブアンドテイクの関係が出来上がります。私が今まで仕事でうまくいったのもすべてそういう流れでやってきました。
ところがビジネス交流会の類はほとんどがテイクしたい人たちばかりの集まりですから、言わば“商売したいオーラ”むき出しの会合です。そんなところに出かけてもほとんど役に立つことはないでしょう。人脈づくりの基本はこちらから何かやってあげる、「ギブファースト」の考え方でないと決してうまくいくものではないということを知っておいてください。
再雇用にしても起業にしても大切なことは、安易に考えないことです。今までと同じ職場で働くのだから再雇用は楽だということでもありませんし、起業すれば未来はバラ色に輝いているわけでもありません。それぞれの働き方にはそれぞれの難しさも一方ではあります。自分の性格と自分がやりたいことは一体何だろうということをじっくりと考えた上で、定年後の働き方を選ぶのがいいのではないでしょうか。
次回、第5回は「老後が不安なら“老後”を無くせばいい!」をテーマに書きたいと思います。
『定年男子 定年女子 45歳から始める「金持ち老後」入門!』
「定年後は悠々自適神話」は崩壊。65歳まで働くことを覚悟している現役世代がほとんど。
しかし勤務先で再雇用されても仕事のやりがい、給与ともに大幅ダウンし、職場の居心地はひどく悪いのが現実だ。
さらに65歳で会社を「卒業」し、年金収入だけになったら、本当に暮らしていけるのか…。 親や自分の介護にかかるお金は? 60代からの就活ってどうやればいい?
人生100年時代に、経済的にも精神的にも豊かな定年後を送るために現役時代から準備すべきことを、お金のプロであり、リアル定年男子&定年女子のふたりが自らの経験と知識を総動員してガイドする。
『3月31日(金)、紀伊國屋書店大手町ビル店 紀伊茶屋にて!』
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2017.3.31更新
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