「権限と責任」が最大のインセンティブであることを知った

 ここのところが実は最も大切なところです。

 よく、「再雇用になったら仕事は同じなのに給料だけが大幅に下がる」とか、「役職が何もなくなるのでプライドを傷つけられる」といったことで、再雇用を否定的に見ている人がいますが、それは大きな間違いです。給料が下がったり、一兵卒として働いたりするというのは、当たり前のことで、私自身もそういう経験をしましたが、そんなことは全く気になりませんでした。

 私が再雇用を経験して一番嫌だったのは、「権限と責任」があまり明確ではなかったことです。

 「再雇用」という制度はまだ始まって間がないため、決して成熟した制度とは言えません。あらゆることが試行錯誤の真っ最中です。技術職や専門職であれば、それまでと全く同じことをすればいいわけですが、営業や一般事務職の場合、どこまで自分の責任と権限があるのかがはっきりしないと、実に居心地が悪いということになります。私は再雇用されてそのことに初めて気づきました。

 給料が下がることは気にならなかったと言うと“きれいごと”に聞こえるかもしれません。ただ、サラリーマンにとって仕事をする上での最大のモチベーションは「報酬」ではありません。

 仕事のやりがい、もっと具体的に言えば、自分にどれだけの権限と責任が与えられるかが大きいのです。課長になると、数名の部下ができ、業務指示や管理が任されます。さらに昇格して部長になれば、その範囲が数名から数十名に広がることになります。

 自分に与えられる権限の大きさと、それに伴う責任の重さが仕事に取り組む上での最大のインセンティブになっていくのです。再雇用の場合は、それまでに持っていた権限と責任は、大きく縮小することになりますが、たとえ縮小したとしてもそれが明確であれば問題はありません。

 ところが多くの企業においてはその「権限と責任」が明確に示されていない場合があります。まわりも接し方に気を遣います。そんな状況で働くのはつらいということなのです。 

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 もちろん、そんな堅苦しく考えるのではなく、それならそれでできるだけ目立たないように「のんきな父さん」として職場で過ごすのも一つの方法でしょう。事実、私の知る限り、そういったのんびりとした再雇用生活を過ごしている人も少なからずいます。しかしながら、人間はプライドを失っては良い仕事などできるはずはありません。小さくても明確な権限が欲しいのです。

 したがって、再雇用で働くのであれば、まずは会社とよく話合ったうえで自分の役割、そして権限と責任がどこまで与えられるのかをしっかりと確認しておくことが大切です。それが明確に示されないのであれば、私のように独立して自分の好きな仕事をやるということも選択肢に入れて良いだろうと思います。

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