正直言って、冒頭のドラマのように定年退職の日に妻から離婚を切り出されたのでは、それを止めることはまず不可能だと言っていいでしょう。

 しかしながら昔と違って今や「人生100年時代」と言われていますから、60歳からでも新しい人生を切り開こうと思えば、不可能というわけではありません。問題は定年後、夫が家にいるようになってから様々なコミュニケーションの問題でぎくしゃくして、あげくは離婚に至るというケースです。

 俗に言われている「夫原病」というやつですね。定年を迎えた夫がずっと家に居ることによって妻のストレスが高まり、心身ともに悪化してしまうと言われているものです。

 夫の立場からすれば、長年一生懸命働いてきてようやく退職し、家でのんびりしているのにどうしてそんな風に言われなきゃならないのか、と思うかもしれませんが、奥さんの立場からすれば家のことは何一つせずに、ただ世話がかかるだけの夫の存在が憂鬱に感じるのは仕方ないことだと思います。こうしたストレスが積み重なって残りの人生が少なくなった時点でさらに悲惨な「高齢離婚」になるのは何としても避けなければなりません。

夫婦は同じ趣味などなくてもいい

 そのために大切なことだと私が思うのは、夫も妻もお互いに自立することだと思います。特に夫は仕事をしないのであれば、積極的に家事をすべきです。

 少なくとも奥さんの忙しいときは食事ぐらい自分で作ることが必要です。何もせずに家でゴロゴロして「おーい、メシはまだか?」というのは最悪のパターンです。妻が出かけようとすると「あれ、俺のメシは?」というのも同じです。小さい子供じゃないのだから、簡単な食事ぐらい自分で作ればいいのです。

 どうしてもできなければどこでも総菜は売っていますし、外に食べに出かけてもいいのですから。もし料理が苦手なら掃除でもなんでもかまいません。少なくとも定年後は家の中では家事についてイコールパートナーだという意識を持って「自立」することが求められます。

イラスト:フクチマミ
イラスト:フクチマミ

 私自身、定年後は家で料理をすることが増えました。やってみると結構楽しいものです。料理本なんか買わなくても最近は料理に関するネットの投稿サイトを見ればレシピはたくさん載っています。

 「男の料理」にありがちな高価な食材を一杯買ってくる必要もありません。台所で余っている食材をキーワードとして入れて検索すれば、それを使ったお料理の数々が出てきますので、自分で考える必要もありません。料理というのは段取りがすべてですから、料理しながら片づけることも考えると、脳の活性化には最も効果があるそうです。

 私はどちらかと言えば家で仕事をすることが多く、妻は外へ働きに行くのでたまに早起きすると妻のお弁当を作ったり、終日家にいるときは晩御飯を用意していたりすると喜ばれます。ボケ防止に加えて妻からも感謝され、自分の楽しみも増えるという、いわば一石三鳥だと言えます。

 もちろん、こうした料理をはじめとする家事だけに限らず、外での仕事についてもイコールパートナーと考えるのが理想でしょう。できれば夫も妻も現役時代だけではなく定年後も自立して自分で働くことをおすすめしたいです。経済的にも、夫婦のコミュニケーションの面から見てもこれがベストな選択肢だと思うからです。

 企業が実施している定年間際の「ライフプランセミナー」などで、よく「定年後は夫婦で共通の趣味を持ちなさい」とか「夫婦で一緒に過ごせる時間を作りなさい」みたいなことを言われますが、私はこういうステレオタイプな思い込みは間違いだと思います。

 共通の趣味などなくてもいいのです。大事なことはお互いを尊重し、互いの領域に踏み込み過ぎないことだと思います。夫婦とはいっても他人ですから、趣味や興味が違うのは当たり前です。それを無理に合わせようとするからストレスが溜まるのです。もちろん自然に同じ趣味を持っているのであれば、それはとても結構なことです。一緒に楽しめるのであればそれに越したことはありません。ただ、無理やり一緒に活動する必要はないということなのです。

 私は親、兄弟、子供は血のつながった他人、そして夫婦はこれまで一緒に戦ってきた戦友だと思っています。できることならこれからも同じ人生をずっと一緒に戦っていけるのが理想です。そのためにも夫婦は決して無理をして相手に合わせようとせず、互いに相手を尊重して暮らしていくことがベストと言えるのではないでしょうか。

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  • 長文コメント氏の物言いが「なぜ熟年離婚が起こるのか」すべてを明らかにしていますね。

  • 貧乏になろうと将来を考えて決めているなら問題ないでしょう。
    世の中には65歳で年金も生活保護も貰わずに子供に寄生するニートもいますので。
    ・年金払ってないので受給資格が無い
    ・子供に寄生しているので生活保護の資格もない
    ・生活費は親類縁者にたかって生きてきたので絶縁状態
    ・こういう人は適当に生きているので、家事能力ゼロ(役立たず)+やる気もゼロ
    ・誰かにたかればいいので、仕事する気もゼロ

    コメントに昭和の話だとかありますが、私(38)に言わせれば視野が狭いなと思います。
    そんな家庭ざらですし、もっと理解不能な家庭もあるんですよ(うちです)

  • 私は56歳の時、不本意ながら会社都合で退職しました。

    セミリタイアしながら自宅で仕事を続けるつもりでしたが、妻から「今後は昼飯は自分で作って」と言い渡されました。

    つまり会社に勤務中は私の昼飯を作る必要がなかったし、退職後私が家で仕事をしていても「昼食を作ると以前より余計な手間だから」と勝手な言い分です。

    完全リタイアしたのなら妻の言い分も分かりますが、私が在宅で仕事をしている一方妻は専業主婦ですから私は妻に「今後も私の収入で家計を支えるのだから、昼飯を作るのは専業主婦である妻の役目だろう」と一喝しました。

    在宅で仕事をして分かったのですが、子供達が独立して家を出た後の妻の毎日暇な事です。

    勤務中は上司にパワハラされて自尊心を傷つけられても我慢し、過酷な会社のノルマと折り合いをつけて頑張って来たのに、妻は家付きカー付ババ抜き三食昼寝付の極楽生活でした。

    日本の女性の平均寿命が世界最高水準なのは当然です(笑)。

  • 40代女性で未婚です、結婚はしてもしなくてもいい(そういう相手がいるかいないかによる)と思っています。
    一度婚約したことがあります。実家に挨拶に連れていかれ数日滞在し、仮義母さんの実家にも連れていかれ、仮義母さんの親の介護の様子を見せられました。私にもそれをしろという圧力を感じました。結婚後しばらくしたら彼の実家に同居するとか、私はパートしろだの、勝手にあれやこれや決められていました。私は具合が悪くなりました。
    それから結婚式はいつするの?だの彼の親から彼伝に言われ、彼は「全部決めて」と結婚情報誌をポンと渡し、面倒ごとを全部私に押し付けました。5年同棲していましたが、家事は100%私がしていました。生活費は折半で家計簿は私がつけ、支払は私がまとめてして、「家事代」として2万円ほど家賃の割合を少なくしてくれていました。それは特に不満はありませんでした。
    婚約してある日、私が食器を洗っていて、彼はいつものようにゲームなどして遊んでいましたので「少しくらいやってよ」と言うと、彼は「何?!」といきなり激怒し、初めて言い返してきました(このときも生活費などは変わらずほぼ折半で、私は働いています、お互い自立しています)。
    それで「あ、この人とはダメだな。少しも協力などしてくれない人だ」と私の心ははっきりして、モヤモヤしていたのはこれだと思いました。私は彼とは結婚したくなかったのです。
    「結婚やめる」と言うと、彼は「そ!よかった!」と負け惜しみを言いましたが、彼の目には涙が滲んでいました。私はそれ以前にも婚約してから「結婚したくない…」と時々つぶやいてしまっていたので、薄々気づいていたんだと思います。
    婚約も同棲も解消し、お別れしました。彼とは結婚してもいずれ別れると予感していたので、この件がなくても私は多分婚約はやめていました。思い出すことはあっても後悔はありません。

    言いたいのは、「協力のバランス」が取れていなければ、片方だけが我慢し、いずれ関係は破綻するということです。結婚してあぐらをかいて相手に負担ばかりかけていたら、離婚されるのは当然です。男女関係ないです。

  • 離婚の原因や損得は夫婦関係以外の要素も重要、言わば外部経済にも注目する必要があります。
    例えば義実家、義両親との関係。夫婦仲は問題がなくても、妻が夫の両親の介護を押しつけられ悲鳴を上げるケースも多いと聞きます。その苦労を思えばたとえ経済的損失があろうとも離婚を選択することもむべなるかな。また、少子化が進めば親の遺産を独占することも多くなる、それは離婚の財産分与の対象とならない個人財産なので損得計算も変わってくることでしょう。
    記事の想定するパターンはいかにも古い家庭のスタイル、これからは離婚貧乏がイヤで離婚を思いとどまることは少なくなるに違いありません。

  • 配偶者を養うとか意味が分からない世代の話か。前提条件書かないのな。

  • 私は53才妻は50歳です。ともに正社員としてそれぞれ会社勤めをしています。
    この話のケースは専業主婦を前提とたないようですが、今現在の日本では既婚女性で専業主婦の割合は就労している女性よりも少数です。
    熟年離婚が金銭的に不利であることを否定はしませんが、共働き夫婦であれば年金分割の必要性もありません。
    また、ワークシェアで家事をする夫婦もおおいはずであり、その場合には夫が食事を作って、妻が出かけるというケースも風雨だと思います。
    この話のケーススタディがあまりに昭和な夫婦に感じました。

  • 「ビンボー」という表現に切実な「貧乏」を感じない。読む気にさえならない。

  • 私も何回か離婚の危機を経験してきた。最初は、二人目の子供の妊娠が分かった時で、年子になる子供だったので、「私一人で二人の面倒は見れないから産みたくない。産めと言うなら一人の面倒を全部見て。夜泣きでもちゃんと起きてオムツ替えたり、ミルク飲ませたり、、」と言われて声も出なかった。『こんな事を言う女だったのか!』が正直な気持ちで、結婚した事を後悔した最初だ。妻は寿退職で専業主婦だったので、子供の面倒は自分は「手伝う」程度と考えていたのと天地の開きがあった。この時の大きな妻に対する落胆は、その後今まで引きずっていたと思う。次の危機は定年退職した時に、私の故郷に一緒に行ってくれるかと聞いた時、一顧もせずに「行かない!」と返答した時。これもショックであったし、二人目の子供の妊娠の時のやりとりが頭をかすめ、『熟年離婚するしかないか』と考えた最初だった。その数年前から、妻は私の実家に行く事を嫌がり、「自分一人で行って」といつも答えは決まっていた。私が単身で海外に赴任していた間に、母から呼びつけられ、我が家の嫁としての義務を果たす様命令されたらしい。私の帰国後、妻から母に虐められたと告げられ、次の帰郷時に母を問いただすとポカンとした顔付きで「そんな事はない」と答えた。『女とは度し難いものだ』とこの時には思ったが、一旦忘れた。結局単身で帰郷し、母の面倒をみはじめた。母の面倒を見始めた事で妻に対する誤解もあった事を認識した。今は毎年年末から年始にかけて2週間を妻と共に過ごす事を楽しみにしている。

  • 内容も参考になりますが、イラストがすごく良いですね。ナミダが滲んでしまいました。

  • お互いに仕事を持ち自分の事は自分でする、家事育児は分担する(今はまだ女性の負担の方が多いけど)。の時代で良かったと思う。なんだかんだ言っても、経済力があって、家事育児能力が高い人間は、どの時代でもどの国でも強い。そして人生楽しく生きる事が出来る。

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2017.3.31更新

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