答えはずばり、退職金の使い方です。

退職金を「勘違い」しないこと

 多くのサラリーマンが受け取る退職金について、大きな2つの「勘違い」が発生しがちです。

 1つは、「退職金は長年働いたことに対するご褒美だ」と思いがちなこと。退職金というのは決してご褒美などではなく、「給料の後払い」なのです。

 退職金のルーツは江戸時代の暖簾分けですから、そもそも発祥の時点では功労報償的な意味合いはあったかもしれませんが、現代においては老後の生活を賄うために、退職後に後払いすることを約束した給与なのです。逆に言えば、この資金は老後生活を賄うためのものとして取っておかなければならないものです。

 にもかかわらず「ご褒美」だと思うとつい気が大きくなり、退職金で豪勢な世界一周旅行に出かけたり、家のリフォームをしたりして散財してしまいかねません。

 もちろん、世界一周旅行やリフォームが悪いというわけではありません。私が伝えたいのは、そうした支出は退職金ではなく、そのために積み立てるなどして準備したお金で支払うべきだということです。退職金を「ご褒美だ」と勘違いして使ってしまうと、後々困ることになります。

 退職金の勘違い、2つ目は「退職金を余裕資金だと思ってしまう」ことです。

 言うまでもなく退職金は老後の生活に必要な、減っては困る大切な資金です。ところが頭でそう分かっていても、ついつい勘違いをしてしまう人は少なくありません。

 こうした勘違いをするのは、長年、給料日になると、一定のお金が銀行口座に振り込まれ、生活を賄ってきたからです。そんな習慣が身に付いているところに、まとまったお金が振り込まれると、ついつい余裕資金だと勘違いしてしまうのです。

 そして、退職金という大金を手にした元サラリーマンに、銀行や証券会社が「投資信託を買いましょう」「運用で増やしましょう」と営業攻勢をかけてくるのは当然のことです。

 特にここ数年、アベノミクスのおかげで紆余曲折はあっても概ね市場は上昇基調が続いています。退職金という、生まれて初めて手にした大金を前にして、「もっと増やしたい」という欲が出てきたとしても不思議ではありません。

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