3号機の「がれき撤去用構台」とは?

 高さ約30mのがれき撤去用構台は、解体用重機を載せて建屋上部のがれきを撤去するための鉄骨造の構造物。部材をなるべく大型ユニット化し、継ぎ手を工夫することで、人手による作業を極力減らして組み立てた。

3号機原子炉建屋のがれき撤去のイメージ(資料:鹿島)
3号機原子炉建屋のがれき撤去のイメージ(資料:鹿島)

 5ページ1枚目の写真にクローズアップすると、特殊な継ぎ手が見える。部材を吊り込むと、下の部材に取り付けたクワガタムシの顎のような金物が、自動的に閉まる仕組みだ。ここまでの作業は、クレーンを遠隔操作して無人でできる。最後に、上に載せた重機の振動で金物が外れてしまわないように、ピンを挿して固定する。この作業だけは、人手で行った。

5ページ1枚目の写真の中央部をクローズアップした。オレンジ色の破線で囲んだ箇所が、がれき撤去用構台の継ぎ手だ(写真:日本記者クラブ取材団代表撮影)
5ページ1枚目の写真の中央部をクローズアップした。オレンジ色の破線で囲んだ箇所が、がれき撤去用構台の継ぎ手だ(写真:日本記者クラブ取材団代表撮影)

継ぎ手の拡大写真。下の部材の金物が上の部材を挟み込む(写真:鹿島)
継ぎ手の拡大写真。下の部材の金物が上の部材を挟み込む(写真:鹿島)
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大型ユニット化したがれき撤去用構台の部材。黄色い部材は、所定の位置に部材を導くためのガイド(写真:鹿島)
大型ユニット化したがれき撤去用構台の部材。黄色い部材は、所定の位置に部材を導くためのガイド(写真:鹿島)

 さて、下の写真は東京電力が2013年2月に原子力規制委員会の特定原子力施設監視・評価検討会に提出した資料の一部だ。構台に覆われた建屋南西面の写真が載っている。実はこの写真には、「東京スカイツリー」にゆかりのあるものが収まっている。筆者は、資料を読み込んでいる最中にたまたま気付いたのだが…。

東京電力が2013年に作成した資料。3号機原子炉建屋の燃料取り出し用カバーについて説明したものだ
東京電力が2013年に作成した資料。3号機原子炉建屋の燃料取り出し用カバーについて説明したものだ

東京スカイツリーとの意外な共通点

 それは、写真中央下に写り込んでいるオレンジ色の機材だ。その名も「スカイジャスター」。大林組が開発した。スカイジャスターは、(1)止まっている吊り荷を回す、(2)回っている吊り荷を止める、(3)止まっている吊り荷を止め続ける、という三つの能力を持つ装置。風の強い現場でも、鉄骨などを効率的に吊り込める。東京スカイツリーの建設現場で大いに活躍した。

 スカイジャスターは、自転車やこまのように、物体を高速回転させると姿勢が安定する「ジャイロ効果」を応用している。スカイジャスター内部で高速回転する「フライホイール」という円盤を傾けると、元の姿勢に戻ろうとする力が働き、これが吊り荷を制御する力となる。対応できる吊り荷の重量は28t、慣性モーメントは125tm2までだ。

東京スカイツリーの天望デッキ用軒天パネルは、てんびんの上に載せて吊り込んだ。てんびんの下にあるのがスカイジャスター。このような使い方もできる(写真:大林組)
東京スカイツリーの天望デッキ用軒天パネルは、てんびんの上に載せて吊り込んだ。てんびんの下にあるのがスカイジャスター。このような使い方もできる(写真:大林組)

スカイジャスターの原理。大林組の資料をもとに日経コンストラクションが作成
スカイジャスターの原理。大林組の資料をもとに日経コンストラクションが作成
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 3号機原子炉建屋の燃料取り出し用カバー工事を担当する鹿島の岡田伸哉所長は、「スカイジャスターは、アタッチメントなどの制御に使っている。大林組には月々の使用料をお支払いしている」と説明する。がれき撤去用構台の組み立てにも用いた。

がれき撤去用構台を組み立てる様子。スカイジャスターを用いている(写真:鹿島)
がれき撤去用構台を組み立てる様子。スカイジャスターを用いている(写真:鹿島)

 話はそれるが、スカイジャスターの活躍の場は建設業界以外にも広がっている。神戸製鋼所グループの神鋼物流は2015年12月、港湾の荷役作業にスカイジャスターを導入した。塩害対策や給電方法の変更を施したものの、原理は同じだ。

 神鋼物流はスカイジャスターの導入によって、作業員が吊り荷に触れたり、吊り具の下でチェーンを支えたりする危険性の高い作業を省略できるようになり、安全性が向上したとみている。

港湾の荷役作業用に改良した青いスカイジャスター。厚板鋼材を吊っている(写真:神鋼物流)
港湾の荷役作業用に改良した青いスカイジャスター。厚板鋼材を吊っている(写真:神鋼物流)

 福島第一原発で行われている工事は多岐にわたり、一般の人はもちろん建設技術者にとっても、なじみの薄い内容が多い。事故から約5年が経過し、関心を失ってしまった人もいるだろう。本稿と日経コンストラクション16年2月22日号の特集を通じて、少しでも興味を持って頂ければ幸いだ。30~40年掛かるとされる廃炉作業に関心を払い続けるのは大変難しい。技術者としての好奇心は、その助けになると思う。

(木村 駿=日経コンストラクション編集)