工事や作業の「相棒」に付けた愛称の数々
現場を訪ねたのはお昼すぎ。午前中の作業は終わり、1号機原子炉建屋の北西にある作業ヤードには、資機材が整然と片付けられていた。人の気配はあまりない。
清水建設が1号機のカバー解体に使っている750t吊りクローラークレーンを見やると、機体に「はやぶさ」と書かれている。鉄道好きの担当者が、新幹線にちなむ愛称を付けたという。もう1台は「かがやき」だ。
作業員の被曝線量を抑えるには、機械化が不可欠。カバーの解体やがれきの撤去では、清水建設が開発した飛散防止剤の散布装置や作業の支障となる鉄骨をつかむためのアタッチメント、がれきの吸引機(掃除機)といった様々な専用機械が活躍している。
⇒職人と機械の競演でカバー解体(「日経コンストラクション」購読者の方向けです)
清水建設では、がれきの吸引機にも愛称を付けたという。どのような名前か想像してみてほしい。と言っても難しいので、ヒントを出そう。2ページで解説したように、1~4号機は大手ゼネコンがそれぞれ担当している。そして、メーカーにも分担があった。吸引機の愛称は、ともに1号機を担当するメーカーに敬意を表して付けた。日立の電気掃除機といえば…。

そう、正解は「かるワザ」だ。苦労を共にした「相棒」への愛着からか、単に覚えやすくするためなのかはケースバイケースだろうが、1号機の現場に限らず、福島第一原発で事故の収束に使用した機材には名称が付けられているものが少なくない。参考までに、主なものを示しておこう。

ようやく凍結開始のめどが立った凍土遮水壁
3ページ1枚目の写真の左下には、銀色の配管が写っている。これは、鹿島が工事を担当した凍土遮水壁の配管だ。凍土遮水壁は、1~4号機原子炉建屋の周囲を延長1500m、深さ30m、厚さ1.5mの凍土で囲み、建屋内への地下水流入を抑える前代未聞の事業。汚染水問題を解決する切り札として、国が2013年に建設を決めた。
凍土を造成するには、二重構造を持つ鋼製の凍結管を約1m間隔で地盤に打ち込む。そして、管内にブラインと呼ぶ冷却液(マイナス30℃の塩化カルシウム水溶液)を循環させ、地盤の間隙水を凍らせる。写真の配管は、ブラインの供給管だ。工事は2月9日に終了した。詳しい経緯については、以下の記事を参考にしてほしい。
⇒カイゼン重ね1927本削孔(「日経コンストラクション」購読者の方向けです)
特集記事の執筆時点では、原子力規制委員会が凍結開始の認可を渋っていた。ところが、2月15日の特定原子力施設監視・評価検討会で、一転して凍結開始を認可する方針を示した。東京電力が、規制委の要求を呑んだからだ。
東京電力や鹿島は、地下水の流れの上流側に位置する凍土遮水壁の山側(西側)を最初に凍らせてから、海側(東側)を凍らせる予定だった。
一方、規制委は山側を先に凍結させると建屋周辺の地下水位が想定以上に低下し、建屋内の汚染水が周辺の土壌に漏れ出す恐れがあることなどを理由に、海側を先に凍結するよう求めていた。凍結を早く開始したい東京電力は2月15日の検討会で、規制委の要求どおり海側を先行して凍結する方針に転換した。
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