
土木・建設の総合情報誌「日経コンストラクション」では2月22日号の特集で、記者による現地取材を交えながら、福島第一原発の今に迫りました。雑誌の性格上、土木技術者向けのややマニアックな話題もありますが、一般のビジネスパーソンの方にも興味を持っていただける内容だと思います。ぜひお読みください。
(日経コンストラクション編集長 野中 賢)
1号機原子炉建屋に残ったがれきの撤去に手を付けるため、4年間にわたって建屋を覆っていたカバーの解体が始まった。工事を担う清水建設は、熟練オペレーターの手足となる専用機械を次々に開発。惜しみなく現場へ投入している。
2015年7月28日、東京電力福島第一原子力発電所で、1号機原子炉建屋を覆う「建屋カバー」の解体が始まった。放射性物質が付着した粉じんが舞い上がるのを防ぐため、がれきに飛散防止剤を吹き付けてから、屋根パネルの解体に入る。
風が弱まる早朝を狙い、国内最大級の750t吊りクローラークレーンを遠隔操作。自動で玉掛けができる専用の装置を吊り込み、全長40mもの屋根パネルを取り外す。まるで巨大なクレーンゲームのような光景だ。
重機を操作するオペレーターの技能と機械が一体となり、一つ目のパネルが無事に外れた。「現場に感動が広がった」。解体を指揮する清水建設の砂山智建設所長は振り返る。屋根パネル6枚の取り外しは順調に進み、同年10月5日に終了した。
建設時と逆の順序で解体
1号機原子炉建屋の上部には、今も水素爆発で崩落したがれきが折り重なっている。廃炉を進めるには、がれきを撤去して燃料取り出し用カバーを設置し、プール内の使用済み燃料を取り出さなければならない。そこで、11年10月の完成から約4年を経てカバーの解体が始まった。
建屋カバーは、放射性物質の飛散と雨水の浸入を防止する鉄骨造の構造物だ。4隅の柱とそれらをつなぐ梁、膜を張った壁・屋根パネルから成り、高さは54.4mもある。設計と施工は清水建設が担った。
同社は、爆発直後の建屋に近付かなくて済むよう、凹凸をかみ合わせるだけで柱と梁を接合する工法を考案。約60ピースに分けた部材を、クレーンの遠隔操作だけで組み上げた(図1の1~4)。
このような構造を有するので、解体時は組み立て時と逆の順序で部材を取り外していく。一般的な解体工事のように鉄骨を切断したり、引き倒したりする必要がない分、簡単そうだ。しかし、実際は建設時にも増して繊細な作業が求められた。
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