全てのユニットを設置し、ロールケーキを八つに輪切りにしたような状態になればドーム屋根の完成だ。接合部を減らすために、“ロールケーキ”同士は緊結しない。風や地震による揺れ幅を計算し、150~200mmの隙間を設けてある。隙間は各ユニットの縁に取り付けたゴムのガスケットで密閉する。
現場で考えないためのマニュアル
鹿島は14年から15年にかけて、小名浜港で予行演習を実施した。ドーム屋根の相吊りやスライド、FHMガーダーの組み立てを施工計画のとおりに進められるか、詳しく検証するのが目的だ。
FHMガーダーには、配管や設備が組み込んであるので、取り合いなどを念入りに確認しておかなければならない(写真3)。「万全を期して発電所に持ち込む」(岡田所長)。
作業員の被曝をさらに抑えるための準備にも余念がない。その一つが、「施工手順ワンシート」と呼ぶ簡易マニュアルだ。
1枚の用紙の表裏に、その日の作業に必要なボルトのサイズや本数、工具、所要時間、部材や足場の状態などを、写真を交えて分かりやすく記した。これらの情報を事前に頭に入れておけば、現場で効率的に動けるというわけだ(図5)。
鹿島の加藤和宏工事長は、次のように説明する。「線量が高い3号機では一定のサイクルで職人を入れ替えざるを得ない。ドームの設置を終えるまでに7、8回転は要するだろう。小名浜で作業を経験できなかった職人も工事に携わるので、このようなシートを作業ごとに作成している」。
例えば、とびが鉄骨部材を玉掛けする際は、吊り荷の形状に応じて複数のチェーンブロックの長さを調整し、水平に揚重しなければならない。現場で調整に手間取ると、被曝線量が大きくなってしまう。
そこで、予行演習の際に計測しておいたチェーンブロックの長さをシートに記しておき、現場では数値のとおりに調整するだけで水平に揚重できるようにした。
鹿島は周到に練った施工計画をもとに16年夏からFHMガーダーの設置を始め、17年秋までにカバーを組み上げる予定だ。
「工程を左右するのがストックヤード。発電所内では様々な工事が動いているので、ヤードに余裕がない」と岡田所長。作業員の確保も懸念材料だ。既にとび工事を営む数社に打診を始めた。
(木村 駿=日経コンストラクション編集)
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