がれき撤去を2011年9月から開始

 水素爆発で上部が崩落した3号機原子炉建屋では、鹿島が2011年9月にがれきの撤去を開始。600t吊りクローラークレーンや解体用重機など合計10台を遠隔操作し、放射線量が高い現場で被曝を避けつつ作業を進めた。

 撤去中の鉄骨がプール内に水没するなど、幾多のトラブルに見舞われながらも、なんとかがれき撤去は終了。「現在はオペレーティングフロアの除染と遮蔽体の設置を進めている」(鹿島の岡田伸哉所長)。

 オペレーティングフロアの放射線量が目標とする毎時1mSv(ミリシーベルト)まで下がり、短時間ながら人が作業できる環境が整えば、カバーの構築に入る。17年度内の燃料取り出し開始が目標だ(図2)。

図2 ■ カバーの設置と燃料取り出しの工程表
図2 ■ カバーの設置と燃料取り出しの工程表
(資料:東京電力)
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大型ユニット化して吊り込む

 カバーを設計した鹿島原子力部原子力設計室の松尾一平設計室長は、「作業員の被曝線量を抑えるために知恵を絞った。設計と施工が一体となった計画を追求した」と語る。
 以降では、カバーに盛り込まれた工夫の数々を、施工手順をたどりながら解剖しよう。

 松尾設計室長らが被曝線量を抑えるのに最も有効な方法として選んだのが、部材の大型ユニット化だ。

 建屋の西と南に配した2台の600t吊りクローラークレーンを遠隔操作し、事前に製作しておいた大型の鉄骨部材を建屋の上に吊り込む。まずは人手で接合する箇所を限界まで減らし、現場での作業時間をなるべく短縮するというわけだ。

 分割数は輸送能力やクレーンの揚重能力から逆算した。全長57mのFHMガーダーは二十数個に、高さ18mのドーム屋根は25~45tのユニットに16分割して製作した。

 こうして大型ユニット化した鉄骨部材は、小名浜港から福島第一原発まで海上輸送。発電所内のストックヤードに仮置きする。ヤードから3号機までは橋梁の架設にも用いられる巨大な多軸台車で運ぶ。

 最初に構築するのはFHMガーダー。部材をクレーンで建屋のオペレーティングフロアに吊り込み、高力ボルトで接合していく。ボルト締めや玉外しは人手で行う。とびは6~8人を1班とする予定だ。

手前で組み立ててスライド

 続いてドーム屋根を設置する(図3)。FHMガーダー上を東西に走行できるようにした架台に、三日月のような断面をしたユニット二つを向かい合わせに載せて接合する。

図3 ■ 3号機燃料取り出し用カバーの施工手順
図3 ■ 3号機燃料取り出し用カバーの施工手順
(資料:鹿島)
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 接合部はユニットの足元と頂部。いずれもピン接合だ。「施工誤差が出にくく、『ひずみ直し』のように煩雑な現場作業が発生しない」(松尾設計室長)。ピンは作業員が差し込む。

 最も東側(海側)のユニットだけは、クレーンの揚重能力が足りず、定位置まで直接吊り込むことができない。そこで、クレーンに近い西側で組み上げて架台ごと東へスライドさせる。移動速度は分速2.5mだ。

 その後、東から西に架台を移動させながら、順次ユニットを接合していく。そのまま屋根を完成させると架台が内部に取り残されてしまうので、架台は途中で吊り出す。残りのユニットは地上で接合し、2台のクレーンで相吊りして設置する。

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