強化の秘訣は選手以外にもあった

 選手育成だけではない。競歩の場合、もう一つ重要なピースがある。「審判の強化」である。競歩は「常にどちらかの足が地面に接していること」などのルールがあり、レース中に審判が目を光らせている。違反を繰り返すと失格になる。

 転機は2003年の世界陸上パリ大会だった。出場した日本人選手5人のうち3人が失格となるという緊急事態。2002年に国際陸上競技連盟がルール運用を厳格化していたが、国内の審判育成が未整備で、対応できていなかったからだった。

 ルール改正などの変化に適応できず、日本人選手が苦戦した例は柔道など他の競技にも多い。競歩は世界陸上での苦杯を受けて、すぐにキャッチアップの策を講じた。

2003年の世界陸上パリ大会。男子マラソンで佐藤敦之が金メダルを活躍する一方で、競歩では失格が相次いだ(写真:読売新聞/アフロ)

 日本陸連は2004年から審判育成制度を開始。並行して国際陸連から競歩委員会委員長を国内に招聘してセミナーを開くなど、判定対策を強化した。選手だけではなく、審判も“強化”したわけだ。

 違反や失格の数は目に見えて減った。例えば前述した世界記録保持者の鈴木雄介選手は、競技生活を始めてから失格ゼロを続けている。

 3月時点で、日本競歩陣でリオ五輪に内定しているのは谷井孝行選手など4人。今後は最終調整を経て、リオ五輪を迎える。強化委員の三浦氏は「選手によってケースバイケースになるが、(前述の2泊3日のような)強化合宿はやりたい」と話す。競歩は1人の競技だが、「チームで強化する」という方針は今も変わっていない。

 これまでマラソンの影に隠れていた「もう一つの長距離」がリオで輝きを増しそうだ。