午前8時40分。ヤマハ発動機のオフィスに、さわやかな音楽が鳴り響く。多くの社員が席を立ち、一斉にストレッチ運動を始めた。

始業前のヤマハ発動機のオフィスには「Revストレッチ」の音楽が流れる
バイクを運転する動きも取り入れている

 首に肩、腰、アキレス腱。音楽に合わせ、全身の関節を伸ばしていく。中腰になり、腕を前に突き出して手首を下に折る動作は、バイクに乗って「ブルンブルーン」とアクセルを回すイメージだ。そして最後に深呼吸。ストレッチが終わると、各自デスクに戻って始業に備える。

 5分弱の毎朝の「ルーティーン」。昨年10月、ヤマ発は国内の主要拠点に導入した。始業前であり参加する義務はない。それでも、拠点やフロア、部門によって違いはあるもの、平均して5割以上の社員が参加し、8割以上の職場もあるという。

 それまでヤマ発の始業前のオフィスでは20年以上、違う音楽が流れていた。生産現場での安全を目的に作られた、ストレッチ運動の音楽だ。しかしオフィスでの参加率は極めて少なく、単なる「BGM」になっていた。

 新しいストレッチの音楽は、ヤマ発と同じルーツを持つヤマハの関連会社に所属する作曲家が担当した。そして動作は、ヤマ発がオフィシャルスポンサーとなっているサッカーJリーグ、ジュビロ磐田のフィジカルコーチが監修。社内のアンケートでは、58%の社員が「肩こりや腰痛を和らげる効果がある」と回答している。

 「企業スポーツ」はこれまで、自社の広告宣伝や社内の一体感の醸成などが主な目的だった。ヤマ発のストレッチの場合、支援するスポーツチームの持つ知見や専門性を、企業にフィードバックしている。昨年12月からストレスチェックが義務化されるなど、社員の心身の健康の改善は企業の至上命題になっている。ヤマ発のストレッチは、こうした企業が抱える課題に対する1つの方法と言える。